病棟看護師として働く中で、「夜勤がきつい」と感じる方もいるのではないでしょうか。
看護師には、日勤看護師や夜勤専従看護師などさまざまな勤務形態がありますが、その中でも、夜勤は特に身体的・精神的な負担が大きいといわれています。
この記事では、夜勤がきついと感じる4つの理由を解説し、その乗り切り方やどうしても辛いときの対処法をご紹介します。
夜勤の負担を軽減し、働き方を見直すヒントになれば幸いです。
看護師が夜勤をきついと感じる4つの理由
看護師の退職理由としてよく挙げられる「夜勤のきつさ」。
看護師の夜勤は、身体的にも精神的にも大きな負担がかかるものです。
夜勤がどれほどきついか、経験から実感している方も多いでしょう。
ここでは、看護師が夜勤をきついと感じる理由を4つ紹介します。
生活リズムが安定しない
日勤と夜勤が不規則に繰り返されるため、看護師の生活リズムは乱れがちです。
不規則な勤務によって体内時計が乱れ、メラトニンの分泌が正常に行われなくなり、睡眠障害を引き起こすケースも少なくありません。
また、夜勤は日勤より休息が取れないことも多く、ストレスや疲労が蓄積しやすいです。
そのため、夜勤明けは暴飲暴食に走りやすく、メタボリックシンドロームのリスクを高める原因になりやすいので注意しましょう。
スタッフ数が少ない・受け持つ患者の数が多い
夜勤はスタッフの人数が日勤より少ないため、看護師一人あたりが受け持つ患者数は、日勤より多くなります。
特に新人のうちは、受け持ち患者や業務の多さに強いプレッシャーを感じやすいでしょう。
また、夜勤の日に休んでしまうと、他の夜勤スタッフに大きな負担がかかります。
そのため、「多少体調が悪くても絶対に休めない」と感じる看護師が多く、夜勤にプレッシャーを感じる要因となっています。
体力的な負担が大きい
看護師の夜勤は、2交代制の場合で最大16時間拘束されます。
「休憩1時間と仮眠2時間」のように休める時間が設けられているものの、急変や緊急入院の対応があると、休憩や仮眠が取れないまま16時間連続で勤務することもあります。
また、3交代制では「日勤→深夜」「準夜勤→日勤」のように、勤務間隔が極端に短くなる場合があり、十分な休息が取れないことも多いです。
夜勤は体力的な負担が大きいため、年齢を重ねるほど「きつい」と感じる人が増える傾向にあります。
定時で帰れない
夜勤の看護師は、食事配膳・投薬・おむつ交換などの日勤と共通の業務に加えて、書類作成や資料整理などの事務作業も担当します。
何もなければ時間にゆとりを持って業務に取り組めますが、急変や緊急入院が発生すると、その対応に多くの時間を割くことになります。
結果として、緊急度の低い記録や事務作業が後回しになり、定時を過ぎても帰れないといった状況になりがちです。
看護師がきつい夜勤を乗り切る方法
夜勤は心身ともに大きな負担がかかるものですが、看護師として働く以上、避けられないこともあるでしょう。
ここでは、「きつい夜勤を乗り切る方法」を3つご紹介します。
夜勤前に90分程度の仮眠をとっておく
夜勤を乗り切るためには、夜勤前に仮眠をとっておくと良いでしょう。
人間の体は、起きてからおよそ8時間後に一度眠気を感じる仕組みになっています。
また、睡眠には90分で一周するサイクルがあるため、90分単位で仮眠をとるとスッキリ目覚められます。
そのため、朝起きてから8時間後に90分程度の仮眠をとるのがおすすめです。
夜勤中に少なくとも15~20分、可能なら90分の仮眠をとる
夜勤前の仮眠から8時間経過すると、再び強い眠気に襲われることがあります。
夜勤中の集中力を維持するためには、眠気を感じたタイミングで90分の仮眠をとるのが理想的です。
しかし、夜勤中にそれだけの時間を確保するのは難しい場合もあるでしょう。
その場合は、15分〜20分程度の短時間の仮眠がおすすめです。
30分以上の仮眠をとると脳が深い眠りに入ってしまい、起きてからのパフォーマンスが低下する可能性があるため注意しましょう。
夜勤中の眠気覚ましを準備しておく
眠気を感じたまま仕事に取り組むと、集中力や判断力の低下により、ミスを引き起こす可能性があり危険です。
そのため、ミント系のガムやタブレット、カフェイン飲料など、眠気覚ましを事前に準備しておくのが大切です。
眠気覚ましが手元にないときに眠気を感じた場合は、病棟をラウンドして軽く体を動かしたり、深呼吸をしてリフレッシュしたりすると良いでしょう。
また、同僚や眠れない患者との会話も、眠気の解消に役立ちます。
夜勤の影響を最小限に抑えるための夜勤明け~翌日の過ごし方
夜勤明けは生活リズムが崩れてしまうため、疲れが十分に取れず、次の勤務にまで影響が出てしまうことも少なくありません。
ここでは、夜勤の影響を最小限に抑えるための、夜勤明け〜翌日の過ごし方のポイントをお伝えします。
日勤と同じリズムで生活する
夜勤明けは、強い疲労感から寝だめをしたくなる人もいるでしょう。
しかし、寝だめによって生活リズムが乱れると、体調不良を引き起こし、次の勤務に支障が出る可能性があります。
このような事態を避けるためには、夜勤明けでも日勤と同じリズムで生活を送り、サーカディアンリズムを維持することが大切です。
夜勤明けの仮眠は90分程度に抑え、日中は適度に活動し、夜は普段通りの時間に就寝するよう意識しましょう。
趣味や適度な運動でリラックスする
夜勤後は、趣味や運動に取り組み、夜勤中に蓄積したストレスを発散するのがおすすめです。
映画鑑賞やショッピングなど、自分が楽しめる活動なら基本的に何をしても構いません。
ただし、登山などの体力を大きく消耗する趣味は避けた方が良いでしょう。
運動をする場合は、有酸素運動やストレッチなど、30分前後で取り組める軽い運動が適しています。
消化に良いバランスの取れた食事をとる
夜勤明けに仮眠をとる前に、朝食や昼食を済ませておく人も多いでしょう。
しかし、夜勤中に蓄積したストレスを解消するため、暴飲暴食をしてしまうという声もよく耳にします。
特に、脂質の多い食品や多量の食事を摂取すると、胃腸に負担がかかり、消化不良を引き起こす場合があります。
その結果、身体が十分に休まらず体調を崩す可能性があるため、仮眠前は「消化に良く、バランスのとれた食事」を心がけましょう。
うどん以外に消化にいい食べ物はある?胃に優しい料理やメニューを紹介どうしても夜勤をしたくない時の対処法
夜勤が原因で体調を崩したり、朝起きられない状況が続くのは、ストレスや疲労が限界に近づいているサインかもしれません。
実際、夜勤のきつさを理由に退職を検討する看護師も少なくないのも事実です。
ここでは、夜勤を避けたい場合の対処法を4つご紹介します。
休職する・まとめて有給をとる
夜勤が原因で体調を崩している場合は、体調が悪化する前に、しばらく仕事を休むのも選択肢の一つです。
休職や有給を使ってまとまった休暇期間を確保すると、ストレス源である看護業務や人間関係から一時的に完全に離れられます。
この期間を利用してストレスや疲労を和らげ、心身の健康状態を回復させることに専念しましょう。
夜勤がきついことを上司に相談する
夜勤が原因で、朝起きられない、吐き気がする、頭痛が続くといった症状が出ているときは、素直に上司に相談してみましょう。
夜勤の影響を具体的に伝えれば、日勤のみの働き方に変更するなどの対応をしてもらえることも多いです。
同じ部署内でシフトを調整してもらえる場合は、労働環境や人間関係を変える必要がないため、安心して働き続けられるメリットがあります。
相談すれば状況が改善する可能性もあるため、一人で抱え込まず、まずは上司と話し合う時間を作るのが大切です。
夜勤の負担が少ない部署への異動を申請する
夜勤のきつさに悩んでいる場合は、別部署への異動を検討するのも一つの方法です。
例えば、検診科や手術室、外来などは夜勤がない場合が多いため、異動すれば夜勤の負担から完全に解放されます。
また、透析科のように忙しく動き回らない部署は体力的な負担が少ないため、夜勤があっても無理なく働きやすいでしょう。
このように、夜勤の負担を軽減しながら同じ職場で働き続けられる点が、異動をするメリットです。
夜勤のない職場に転職する
職場内での異動やシフト調整が難しい場合は、日勤のみの職場へ転職する選択肢もあります。
特に、夜勤のきつさだけでなく、職場の人間関係や労働環境にストレスを感じている方には転職がおすすめです。
夜勤無しの職場の例としては、以下のものが挙げられます。
- 健診センター
- 献血ルーム
- 一般企業の健康管理室(産業看護師)
- 夜間営業を行わないクリニック
- 訪問看護ステーション
看護師の夜勤はきついがメリットもある
夜勤のきつさに直面していると、ついメリットを見逃してしまいがちです。
ここでは、改めて夜勤のメリットを確認し、夜勤が自分にとって受容できる働き方かどうかを考えるきっかけにしてみてください。
夜勤手当が支給される
夜勤の大きなメリットは、夜勤手当や深夜割増賃金が支給されることでしょう。
特に、夜勤手当は看護師の収入を支える重要な要素の一つです。
日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」によると、夜勤の平均回数は、3交代制で月7.5回、2交代制で月4.9回。
手当額は、2交代制で平均11,368円、3交代制の準夜勤で4,234円、深夜勤で5,199円となっています。
これを月単位で計算すると、夜勤をこなすことで月平均3万円~5万円(年間36万~60万円)の収入アップが見込めます。
夜勤明けは昼間に好きなことができる
夜勤明けには、平日の昼間に自由な時間が取れるメリットがあります。
平日の昼間は、道路や商業施設が比較的空いており、ストレスなく買い物や用事を済ませられます。
また、銀行や役所など、平日しか対応していない場所にも有給を使わずに行けるため、スケジュールの融通が利きやすいのもポイントです。
このように、昼間の時間を自由に使えるのは、夜勤をこなす看護師の特権といえます。
夜勤経験がある看護師は転職で有利になる
看護師の求人には「夜勤あり」という条件付きのものが多く、夜勤ができる人材を求める病院が少なくありません。
そのため、夜勤経験が豊富にあると応募できる求人の幅が広がり、即戦力として採用されやすくなります。
また、転職時の自己アピールにおいても夜勤経験の豊富さは大きな強みとなり、採用担当者に好印象を与えます。
このように、夜勤ができる看護師は転職市場で需要が高いため、有利な条件で新しい勤務先を探しやすいのもメリットです。
看護師の夜勤がきついと感じたら、負担を軽減する方法を考えてみましょう!
看護師の夜勤がきつい理由には、生活リズムの乱れや体力的な負担、スタッフ数の少なさなどがあります。
一方で、夜勤手当による収入増加や、転職時のアピールポイントになるなどのメリットも存在します。
夜勤がきついと感じた場合は、この記事で紹介した方法を参考に、夜勤前後の過ごし方を工夫してみてください。
また、夜勤の影響で体調不良や精神的な症状を引き起こした場合は、休職や転職を通して自分に合った働き方を探してみましょう。