自分のことをHSPだと思っている看護師は、働き方があっているか悩んでいる人もいるでしょう。
HSP看護師は物事を深く考える傾向があります。
この気質はひとつの出来事をさまざまな角度からとらえ、深く理解するため、HSPの長所と言えます。
しかし多くのHSP看護師は、そのような資質をネガティブにとらえ、職場で自信を失っているケースがあります。
この記事を読むと、HSPと上手に付き合い、看護師としてより良い働き方を見つけるヒントが得られます。
HSPの看護師が「辛い・仕事が向いてない」と悩む理由
HSPは病気ではなく、その人の持っている特徴です。
少数派であり、他の人にとっては気にならない点で悩むため、社会に適合していないと落ち込んでいる人もいるでしょう。
〇〇すべきと考える傾向にある
HSPは自分では気づいていなくても「こうであるべきだ」という思いが強くあります。
患者さんへの気遣いや責任は、人一倍強い傾向にあるでしょう。
自分に厳しく人に優しい姿勢を持ち、看護師として好ましいように思いますが、自分に厳しすぎるあまり、疲れやすく、余力がない働き方になりがちです。
共感力が高いため臨床で負担を感じやすい
HSP看護師は共感力が高く、相手の気持ちに寄り添う傾向が強くあります。
共感力が高いため、患者さんの涙をみて一緒に落ち込んだり、相手の不安をいち早く察知したりします。
自分の身に起こったかのように感じて、1日働いた後はヘトヘトになってしまうでしょう。
臨床では痛みに耐えている人や、手術の不安を抱えている人といった辛い状況にいる患者さんと向き合わないといけません。
HSP看護師にとっては、自分がしんどくなりやすい環境です。
看護師同士のいさかいが苦手
忙しいと看護師同士がピリピリしたり、お互いに「もっとこうしてほしい」と意見を言いあう場面もあります。
お互いの意見を受け止められる関係ならいいのですが、相手によっては自分の意見を押し通す人もいるでしょう。
そういった時に相手の機嫌を敏感に感じとるHSP看護師であれば、無理して要求を聞いてしまうこともあり、負担を人より抱え込む傾向にあります。
HSP看護師の強み
HSP看護師が苦手とする場面は、長所の裏返しでもあります。
少数派のHSPですが、他の人にはない強みをみていきましょう。
質の高い看護ができる
HSP看護師は真面目で優等生タイプの人が多い傾向にあります。
他の人がそれほど気にしていないことも、こうであるべきだという正義感のもと、より良いケアを追求していくでしょう。
自分の持っている100%以上の力を出し切ろうと、看護のケアの質が他の看護師より高い傾向にあるため、患者さんの満足度も高くなります。
音やにおいに敏感で患者さんの状態を把握できる
HSPの気質は、においや音に敏感だと言われています。
例えば、小さな物音に気づいて転倒して動けなくなった患者さんを発見したり、排泄物のにおいから患者さんの異変を素早く察知することができます。
また、治療や病状によって音やにおいに敏感になっている患者さんに配慮し、いち早く対策をとることで、不快感を和らげる看護につながりやすいでしょう。
多角的に患者さんの状態をとらえる
HSP看護師は、情報の受け取り方が細やかなため、他の人が見落としている点にも気づくことができるでしょう。
関わっているキーパーソンの言動や社会背景なども患者さんにとって重要な情報です。
そしてさまざまな角度から患者さんの情報を受け取り、熟慮を重ねて看護の方針を組み立てていくことにつなげます。
危機管理能力を生かせる
HSPは行動に移す前に、今後の状況について、いくつパターンがあるかじっくりと考える特徴があります。
そのため、危険予知能力が高いと言えるでしょう。
看護業務では、思い込みや見落としが原因でインシデントが起こりやすいため、注意深く業務を行う必要があります。
HSP看護師は「これをすると問題が起きるかもしれない」という可能性を考えながら働くことに長けています。
患者さんやスタッフへ気配りができる
HSP看護師は、患者さんの気持ちを察知して、言われなくても事前に何を求めているかを把握することができる場合も。
スタッフが困っている時も、相手の気持ちを他の人より敏感に感じとり、求めている手助けができるでしょう。
相手の気持ちをくみ取るのが上手なHSP看護師は、患者さんやスタッフから喜ばれる存在です。
仕事の責任感がある
物事への責任感が、非常に強いHSP看護師は、周囲から信頼される存在となるでしょう。
看護師の仕事はリレー形式のため、仕事を引き継ぎながら行う必要があります。
中途半端な状態で引き継ぎが起こると、ミスにつながりかねません。
相手に対する配慮ができるHSP看護師は、仕事を一緒にしやすい仲間と言えます。
HSP看護師の弱み
HSPの気質は、良い面と悪い面が表裏一体のため、環境によっては悪い面が目立ってしまう場合もあるでしょう。
短所として見た場合のHSPの気質をあげていきます。
インシデントを気にしすぎる
インシデントは、自分だけでなくチームの働きや仕組みでも起こりますが、あらゆる可能性を考えるHSPにとっては、看護の現場は気になる場面がたくさんあります。
インシデントにつながりそうな場面に遭遇すると、あらゆる可能性を考え、時には疲弊してしまいます。
自分に厳しすぎる
自分に高い基準を求めるHSPは、看護師として働く中で、厳しいルールを決めているケースがあります。
看護師として働くなかで「もっと患者さんに親切にしなければ」「気遣いは十分にできているだろうか」といったように、自分の行動や対応の質に過剰にこだわってしまうことがあります。
そのため、他の人よりも自分に厳しくなっている傾向があるでしょう。
リーダーへの報告が苦手
HSPは相手の状況や気持ちに配慮しすぎるあまり、声をかけるタイミングがあっているのか不安になることがあります。
リーダーは常に周囲から報告を受けて、忙しくしているため、声をかけにくいと感じる場面も。
臨床では報告が遅れると、周囲に迷惑をかける可能性があるため、相手への配慮を優先するHSPにとってはチームの連携が時に苦手と感じるでしょう。
仕事を抱え込みやすい
周囲の忙しさや負担を敏感に感じ取るHSPは「これ以上頼むと相手の負担が増えるのではないか」と配慮する気持ちから、自分の仕事を増やしてしまう可能性があります。
仕事を抱えて困っていても、周囲に頼めないため、さらに負担を抱えやすい傾向にあるでしょう。
HSPの看護師が辛いと感じた時の対処法
HSP看護師は長所を活かしていない働き方だと、その環境では長続きしないでしょう。
辛いと感じた時は、自分の考え方や環境を変える時です。
他人に好かれようとしない
HSPの人は、周囲の気持ちを敏感に読み取ってしまうため、相手に配慮しすぎることがあります。
自分が好かれないと思うから、余計に周囲に配慮してしまうのでしょう。
HSPの人には、自尊心が低い人が多く見られると言われており「自分は好かれていないのではないか」と不安を抱えやすいことも原因です。
しかし「嫌われてもかまわない」と思い切って気持ちを切り替えることで、精神的な負担が軽くなり、心が少し楽になることもあります。
自分の限界を受け入れる
優等生タイプが多いHSP看護師は、自分に求めるものが他の人よりも厳しいことがあります。
HSPは自尊心が低い人も多いため、物事が上手くできないと自分の価値が低いのだと思い込んでしまうことも。
しかし、自分の力量を伝えられる人は、相手に信頼されるケースもあります。
仕事において周囲に助けを求めることは、マイナスなイメージばかりではありません。
自分のできる範囲を認め、抱え込むことのないようにしましょう。
自分を大切に扱う
人に配慮するHSPは、自分の感情よりも相手の感情を敏感に感じとり、優先する傾向にあります。
最初は、自分を優先することに抵抗があるかもしれません。
まずは、自分を大切に扱うと決めて、行動する時に自己犠牲になっていないか意識するところからはじめると良いでしょう。
HSPの看護師が働きやすい職場
HSPは自分にあった職場を選ぶことが大切です。
苦手な環境で働き続けると、ストレスがたまって仕事自体が苦痛になってしまうでしょう。
HSP看護師が働きやすいと感じる職場環境をみていきます。
適切な距離感で人間関係を築ける職場
病院では看護師がペアになって働く部署もあれば、1人で作業を行う部署もあります。
ずっと誰かと一緒に過ごす働き方は、HSP看護師にとってストレスとなる可能性も。
病院以外の施設や訪問看護であれば、1人で利用者さんと関わる時間が多いため、より看護に集中しやすいでしょう。
仕事への意識が高すぎない
「日本一の〇〇を目指す」といった高い目標を持つ病院も見かけます。
意識が高いことは素晴らしいのですが、目標が高いと自分に厳しいHSP看護師は、さらに自分に厳しくなってしまいかねません。
周囲の期待に応えようと頑張りすぎる可能性があります。
「目の前の患者さんに良いケアを提供しよう」などの身近な目標を立てている、自分にとって心地よいと感じる組織を選ぶと良いでしょう。
音や光の刺激を受けすぎない
音や光の刺激に敏感なHSP看護師は、刺激の少ない環境を選ぶ方が良いでしょう。
室内の光でもHSPにとっては、明るすぎると疲労感を感じる場合もあります。
手術室など特殊な環境は、手術野を明るく照らす無影灯を使用し、室内も明るいため、病棟よりも光の刺激が強いと感じるでしょう。
NICUであれば室内は暗いのですが、常にポンプなどの精密機器の音が聞こえるため、気になってしまう可能性も。
光や音の刺激が少ない職場を選ぶと、ストレス軽減につながります。
勤務形態が固定している
看護師の勤務形態は、多くの病院で夜勤を含めたシフト制を取り入れています。
日勤と夜勤を行い、受け持ち患者さんや一緒に働くスタッフが毎回変わる環境は、HSP看護師にとって負担の大きい現場となります。
HSP看護師は環境の変化が少ない方が、ストレスを抱えにくいため、勤務形態が固定されている職場の方が働きやすいと感じるでしょう。
個別ケアに集中できる
HSP看護師は、毎回異なる患者さんやスタッフと関わる環境では負担を感じやすい傾向があります。
HSP看護師は同じ環境で働ける場合、集中して仕事に取り組み、質の高い看護が行えるでしょう。
例えば、訪問看護では患者さんごとに担当が決まっており、関わるスタッフも限られます。
一例として訪問看護ステーション「ルラシオナ」ではスタッフが少人数で密に連携しながら、患者さん一人ひとりに寄り添った丁寧なケアを行っています。
働き方が辛いと感じたら、HSPが看護師にあたえる影響を生かして働く環境を見つけよう!
HSPは個人の特徴であり、治すものではありません。
しかし、今の環境に馴染めず、自信を失って働いていると自己肯定感も下がり、ミスも増えるといった悪循環になりかねません。
人には得意や不得意があるため、HSPの得意な面を活かせる環境を選ぶことがとても大切です。
例えば、個別ケアが得意なHSPの特性は、訪問看護や企業看護師、派遣など、患者一人ひとりに向き合える働き方に適しています。
転職サイトの中には、自己分析やキャリアの相談にのってくれるところもあるため、相談しながら自分の得意な面を見つけていくことも選択肢の一つとなります。
HSP気質の良い部分に目を向けて、人間関係の負担を減らしながら、自分らしく働ける環境を探しましょう。
参考図書:イルセ・サン 枇谷玲子訳(2016).『【HSPチェックリスト付き】鈍感な世界に生きる敏感な人たち(心理療法士イルセ・サンのセラピー・シリーズ)』.ディスカバー・トゥエンティワン.