「専門性を持った働き方に変えていきたい」
「もっとスキルアップをしたい」
このように考え、今後の働き方を悩んでいる看護師は多いでしょう。
専門看護師や認定看護師と、職場で一緒に働いている人も、資格をとるメリットや役割の違いについて理解できていない場合も。
この記事を読むと2つの資格の違いや、資格を取得するメリット・デメリット、助成制度についても知ることができます。
専門看護師と認定看護師の違いとは?
専門性の高い資格であることは知っていても、制度について知らない人も多いでしょう。
専門看護師と認定看護師の違いをみていきましょう。
専門看護師とは?
専門看護師は、特定の分野において高度な知識と実践能力を持つ看護師で、日本看護協会が認定する資格です。
看護師免許を取得した後、5年以上の実務経験を持ち、専門看護師の特定の領域について大学院で学び、単位を取得した後に審査に合格すると得られる資格で、5年ごとに更新します。
多様な背景を抱えた患者さんや家族の問題に向き合い、専門知識や技術をもとに、他の医療職の相談にのり、総合的に問題を解決する専門家になるでしょう。
多くの専門看護師は病院で働いていますが、大学や訪問看護ステーション、看護協会などでも活躍しています。
認定看護師とは?
認定看護師は、5年以上の実務経験を持ち、認定看護師になるために定められた600時間以上の研修を修了し、審査に合格すると得られる資格で、5年ごとに更新します。
認定された分野の専門知識を活かして、臨床の現場で最適な看護を判断して、他の看護師のアドバイスや相談に乗ることで、現場で看護の質向上に関わっていく立場になるでしょう。
病院やクリニック、介護保険施設などで活躍しています。
専門看護師と認定看護師の違い丨分野別
それぞれの資格には専門分野があります。
今後も新しい分野ができる可能性はありますが、自分の働いてきた分野を深めたいと資格取得を検討される方もいるでしょう。
専門看護師の分野
専門看護師には
- がん看護
- 在宅看護
- 家族支援
- 慢性疾患看護
- 急性・重症患者看護
- 遺伝看護
- 感染症看護
- 母性看護
- 災害看護
- 精神看護
- 地域看護
- 放射線看護
- 老人看護
- 小児看護
の14分野があります。
一番新しい分野は放射線看護で、2022年に追加されました。
放射線医療は様々な治療に必要であり、患者さんやその家族に対して、安全で継続した看護が実践できるように学んでいます。
看護師が放射線医療について学ぶ機会は少ないため、このような資格を持った看護師は全ての医療職にとって大きな役割を果たすでしょう。
認定看護師の分野
認定看護師制度の分野は、再編が行われています。
現在の救急看護と集中ケアはクリティカルケアへ統合されるため、自分の興味のある分野が再編されるのか、詳しくは日本看護協会のホームページで確認しましょう。
新しい19分野は、
- クリティカルケア
- 緩和ケア
- がん薬物療法看護
- 在宅ケア
- 生殖看護
- 腎不全看護
- 摂食嚥下障害看護
- 小児プライマリケア
- 脳卒中看護
- 呼吸器疾患看護
- 心不全看護
- 皮膚・排泄ケア
- 感染管理
- 糖尿病看護
- 新生児集中ケア
- 手術看護
- 乳がん看護
- 認知症看護
- がん放射線療法看護
です。
専門看護師と認定看護師の違い丨役割別
専門看護師と認定看護師では与えられている役割に違いがあります。
現場ではどちらの資格もスペシャリストに変わりはありませんが、細かな違いが存在します。
専門看護師の役割
専門看護師は6つの役割として実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究を行います。
必要なケアが行われるように調整を行ったり、スタッフに専門知識を用いて教育を行ったりすることで、総合的な看護の質向上に努めます。
研究においては更新時に詳細な案件が決まっており、研究発表や学会講演などが必要です。
認定看護師との違いは、研究を行ったり、倫理的な関わりについて問題の解決を図ったりと、看護全般に関わる働き方となる点です。
認定看護師の役割
認定看護師は3つの役割として、実践・指導・相談を行います。
専門分野の知識を活かして、看護を行う上で相談にのったり、看護技術の指導を行ったりして現場により沿った関わり方をしていきます。
認定看護師は分野が細かく分かれており、相談しやすく、看護師だけでなく医師からも頼りにされる存在です。
専門看護師よりも、現場でより密接に関わって相談役になっているケースが見られます。
専門看護師と認定看護師になる違い丨メリット・デメリット別
それぞれの資格を取得するには多大な労力と時間がかかります。
特に専門看護師は時間と費用がかかるため、目指す前に見極めることが必要です。
専門看護師になるメリット
看護師が専門性を持つと、みんなから頼りにされ患者さんからも信頼が厚く、働きがいは資格取得前と大きく変わります。
自分の強みを持つことで、仕事も楽しくより勉強する意欲がわきます。
医療の世界は進歩が激しいため、新しい知識や技術を周囲に伝える重要な役割を果たし、同僚だけでなくあらゆる職種の人から尊敬される立場になるでしょう。
専門看護師になるデメリット
時間とお金がかかり、研究を行う必要があるため看護が好きでも論文作成が苦手であれば大変な労力がかかります。
参考資料や文献を集めるため、貯金がなくなると嘆いている看護師もいます。
また大学院をでて臨床現場に戻っても、病院によっては給料面のアップがない場合もあり、資格取得がお給料に反映されずモチベーションアップにつながらない場合も。
専門看護師の数が少ないため、病院内で何かあれば部署に関係なく声がかかるため、仕事量も増えるでしょう。
認定看護師になるメリット
認定看護師は専門性を高めるために勉強する必要はありますが、専門看護師ほど時間とお金はかからないため、専門看護師よりは取得しやすい資格と言えるでしょう。
分野も専門看護師より多く存在し、自分の興味のある分野を深めやすいというメリットもあります。
総合病院で長く勤めると、分野によっては臨床の場を離れて、自分のペースで働く権限が与えられるといった働き方となる可能性も。
認定看護師になるデメリット
認定看護師になるために勉強してきても、給料面に反映されない病院もあります。
反映されても数千円ほどで大きな収入アップにはつながらないでしょう。
認定看護師であれば、病院内で委員会の中心的な役割を任されたり、他部署の仕事を頼まれるケースもあるため、仕事量が増える可能性があります。
「専門看護師」と「認定看護師」自分に向いているのはどちら?
それぞれの資格には、求められる看護師像があります。
自分の行いたい看護に合うのはどちらか知っておく必要があります。
専門看護師に向いている人
専門看護師に向いている人は、大学院に進学し、研究を行いながら看護の質・向上に全般的に関わりたい人に向いています。
現場の指導以外にも、倫理の葛藤や組織作りといった看護全般に関わっていくことが求められるため、広く学びたい人に向いているでしょう。
認定看護師に向いている人
大学院進学が難しく、半年ほどの期間で必要な授業が受講できるケースが多いため、早めに取得したい人に向いています。
学校によっては週末に受講できるケースもあるため、仕事を続けながら取り組める可能性も。
より現場にそった関わりがしたいと思う看護師に向いているでしょう。
専門看護師や認定看護師を目指す時の助成制度
時間とお金のかかる制度のため、助成金の有無によって資格取得にチャレンジするか変わります。
勤めている病院によっては援助される可能性もあるため、勤務中の人は確かめておきましょう。
石橋美和子がん看護CNS奨学金
石橋美和子がん看護CNS奨学金は、日本看護協会のホームページで詳細を確認することができます。
がん看護専門看護師であった石橋美和子さんのご遺志によりつくられた制度で、貸与額は180万円以内です。
無利息で借りられますが、採用数は5名で募集期間は年に1ヶ月といった限りがあるため、興味がある人は早めに応募した方が良いでしょう。
地域や年齢の制限はなく、4年以上の実務経験が必要であるなどの細かい要件があります。
認定看護師教育課程奨学金
認定看護師教育課程奨学金は、日本看護協会が行っている認定看護師資格の取得に向けた支援制度です。
無利息で120万円以内を借りることができます。
1年に2回募集が出るケースもありますが、期間が短いため詳細は日本看護協会のホームページで確認しましょう。
最長4年かけて返済することができます。
専門看護師と認定看護師の違いを知って、自分の目指す看護師像を明確にしよう
専門看護師や認定看護師は専門性が高くなるため、働きがいにつながる一方で仕事量の負担が増えたり、勉強し続ける姿勢が求められたりと大変な部分もあります。
ジェネラリストとしてあらゆる分野に対応できる看護師も素晴らしいですが、専門性を高めた看護ができる人は現場で重宝されます。
勉強したい分野を見極めてチャレンジすることは、長く看護師人生を続ける中で、きっとプラスになるでしょう。
資格取得を目的とするのではなく、その後の働き方にどのように活かしていくかを考えてから取り組むことをおすすめします。