訪問看護師に興味はあるのに「休みがない」と聞いて、不安を感じている看護師の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
たしかに、訪問看護分野では人員不足が深刻化しており、オンコール体制のある訪問看護ステーションが多いことから、休みがとりづらい傾向です。
一方で基本的な勤務は日勤であるため、ワークライフバランスがとりやすいというメリットもあります。
この記事では「訪問看護が休みがない」と言われる理由をくわしく解説し、休みのとりやすいステーションの特徴や確認するポイントなどを紹介します。
訪問看護ステーションへの転職を考える看護師の方が、自分に合う転職先を見つける手助けとなれたら幸いです。
「訪問看護は休みがない・休みづらい」といわれる3つの理由
訪問看護が休みがない、休みづらいと言われる理由に、以下の3つがあげられます。
- 訪問看護業界の人手不足が深刻化している
- 1人あたりの訪問件数が多く対応しきれない
- オンコール体制があり土日祝日の出勤がある
訪問看護現場の現状を、一緒に見ていきましょう。
訪問看護業界の人手不足が深刻化している
看護師の人手不足が深刻化しているなか、訪問看護業界はとくに切迫しています。
訪問看護師は、2025年までに11.3万人が必要とされ、2020年時点での6.8万人から5年間で4.5万人の増員が求められています。
また、訪問看護ステーションの有効求人倍率は3.22倍であり、需要の高まりが強い一方で求職者の少なさが明らかです。
このように訪問看護師全体が不足と言われており、スタッフが足りていないステーションでは看護師1人あたりの負担が増大する傾向です。
そのため、休暇をとる余裕が少なくなり「休みがない」状況となりえます。
参考:厚生労働省「第2回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師等確保基本指針検討部会」
1人あたりの訪問件数が多く対応しきれない
看護師1人あたりの1日の訪問件数は平均4〜5件程度です。
しかし、ステーションによって1日に6件以上の訪問があったり、管理者も同様の件数に対応していたりする場合も珍しくありません。
すると、1人でも休むと対応しきれず、利用者さんの訪問を中止せざるを得ない状況となります。
こうした状況を目の当たりにすると「休むと迷惑がかかる」と思い、休みにくいと感じる看護師の方もいるのです。
オンコール体制があり土日祝日の出勤がある
多くの訪問看護ステーションでは24時間365日対応する「オンコール体制」を導入しており「休みがとれない」と感じる一因となっています。
オンコール体制とは、専用の電話を持って自宅待機で緊急時の電話対応や訪問に備えるものです。
休日であっても常に待機状態となり、身体的にも精神的にも十分な休息をとることが難しくなります。
訪問看護の勤務実態
「休みがない」と言われがちな訪問看護の勤務実態は、以下のとおりです。
- 年間休日数:120日前後
- オンコールの対応頻度:利用者1人あたり月3回
とくにオンコールの対応頻度は、看護師が訪問看護ステーションに転職するうえで気になるポイントです。
くわしく解説します。
年間休日数120日前後
訪問看護ステーションで働く看護師の年間休日数は、一般的に120日程度と言われています。
日本看護協会の「2023年病院看護実態調査」によると、看護師全体の平均年間休日数は116. 6日であるため、休日数は一般的な看護師より多い傾向です。
ただし、オンコール対応や対応後の休日取得などはステーションによって異なるため、転職を検討するステーションに問い合わせたり面接時に聞いてみたりするとよいでしょう。
訪問看護のオンコールの対応頻度
介護保険・医療保険の利用に関係なく、利用者1人あたり月3回程度の緊急対応があると言われています。
オンコールの対象者は、訪問看護ステーションを利用するすべての方ではなく、緊急対応に同意を得ている方のみです。その数は、一般的に全利用者の6割とされています。
たとえば、1月あたりの利用者平均は42.5人とされているため、1日2~3件あたりの緊急対応が必要です。
実際の対応件数は、訪問看護ステーションの規模や利用者さんの医療依存度などで異なります。
気になる転職先がある場合、一度同行見学をおこない、オンコール体制について聞いてみるのもよいでしょう。
参考:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)」
休みやすい訪問看護事業所の特徴
休みがとりやすい訪問看護ステーションの特徴は、以下のとおりです。
- オンコールの対応件数が少ない
- 余裕のあるスケジュール管理をしている
- スタッフの連携や情報共有が密におこなわれている
条件がそろっている訪問看護ステーションほど、スタッフが安心して働ける環境が整っていると言えます。
一つずつ見ていきましょう。
オンコールの対応件数が少ない
オンコール対応が少ない訪問看護ステーションであれば、休日に専用電話を持ちつつもゆっくり過ごすことは可能です。
オンコール対応や緊急訪問が少ない訪問看護ステーションの特徴は、以下のとおりです。
- 医療依存度の低い利用者さんが多い
- 利用者数が少なく、電話が鳴る確率が低い
- そもそもオンコール対応の利用者さんが少ない
- 十分な人数の看護師がおり余裕をもって訪問に回っている
緊急対応の頻度は利用者さんの医療依存度・重症度によって左右され、訪問看護ステーションごとに異なります。
全国の訪問看護ステーションのうち、8割の訪問看護ステーションで24時間365日対応可能な体制を取っており、オンコールのないステーションを探すほうが難しいです。
そのため、できる限りオンコールの対応件数が少ない訪問看護ステーションを探して、効率的に転職活動をおこなうのがよいでしょう。
参考:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)」
余裕のあるスケジュール管理をしている
余裕のあるスケジュール管理をしている訪問看護ステーションは、突然スタッフが休んだり緊急対応が必要になったりしても、柔軟に対応できます。
スタッフに余力があるため、突然のことでも気兼ねなく休めます。
以下の点に配慮している訪問看護ステーションは、とくにスタッフが休暇を取りやすい傾向です。
- オンコール対応後に休暇が取れる制度がある
- 1日の訪問件数を適切に管理し、負担を軽減している
- 移動時間に余裕を持たせ、急な対応にも柔軟に対応できる
- 土日祝休みやシフト制、時短勤務など多様な働き方に対応している
効率的なスケジュール管理は、休みやすい職場環境を作るうえで重要です。
紹介したポイントを参考に、転職候補を選定しましょう。
スタッフの連携や情報共有が密におこなわれている
1人の利用者さんに複数名の看護師が担当している場合は、情報共有が密におこなわれていることが多く、ほかのスタッフが迅速にカバーできるため安心して休めます。
訪問看護ステーションによっては利用者さん専任の看護師を決めているケースもあり、急な休みのときに誰も対応できないという可能性もあります。
また、すべてのスタッフのスケジュールが可視化(見える化)されていると、急な予定変更にも対応しやすくなります。
こうしたことから、スケジュール管理や情報共有の方法を聞いておくと、転職の判断材料となるでしょう。
休みやすい訪問看護事業所を見つけるために確認したいポイント
休みのとりやすい訪問看護ステーションを見つけるために、以下のポイントを確認しましょう。
- 訪問件数
- 年間休日数
- 急な休みへの対応
- 利用者さんの重症度やケア内容
- オンコール体制の有無や緊急対応の件数
これらをおさえれば、自分のライフスタイルに合う訪問看護ステーションを見つけられます。
それぞれくわしく解説します。
訪問件数
看護師1人あたりの1日の訪問件数は、4〜5件程度が平均です。
それ以上の訪問件数になる場合、訪問時間が短く利用者さんの重症度が比較的低いことも考えられますが、訪問看護ステーションごとに実態は異なります。
訪問件数だけでなく、訪問時間もあわせて確かめておくと業務負担を正確に把握できます。
面接時や見学時に直接質問してみてください。
年間休日数
求人票に記載された休日数と、実際の取得状況が異なる場合があるため、面接時に年間休日がどの程度取得できるか確認しておきましょう。
一般的に、訪問看護師は120日前後の休日を確保できるため、目安として検討してみてください。
また、有給休暇の取得率や長期休暇が取れるかも確認しておくと安心です。
急な休みへの対応
急な休みや予定変更への対応についても、具体的に聞いておくことをおすすめします。
たとえば、普段は管理者の訪問件数を制限して緊急対応に備えている場合や、ほかのスタッフと交代制で対応している場合があります。
自分が休んだときだけでなく、ほかのスタッフが休んだときにどのような対応が求められるのかも確認しておくと、職場の実態がよりわかるでしょう。
利用者さんの重症度やケア内容
加算の取得状況から利用者さんの重症度をある程度把握できます。
たとえば介護保険の場合、以下の加算を取得している訪問看護ステーションは重症度の高い利用者さんが多い可能性があります。
加算名 | 内容 |
---|---|
緊急時訪問看護加算 | 24時間体制であることを示す加算 |
特別管理加算 | 医療依存度の高い利用者さんで算定することの多い加算 |
看護体制強化加算 | 医療ニーズの高い利用者さんへ対応する体制を整備している事業所が算定する加算 |
これらは訪問看護ステーションのホームページで確認できることもありますが、実際の対応件数や重症度は面接時に直接質問するのが確実です。
訪問看護業務は、排便コントロールや褥瘡(じょくそう)または、そのほかの創傷処置が多い傾向です。
利用者の医療依存度が高いと医療処置も多くなり緊急対応も頻発する可能性があるため、あらかじめケア内容についても聞いておきましょう。
参考:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)」
オンコール体制の有無や緊急対応の件数
オンコールの体制の有無や緊急対応の件数を把握しておくことは、休みの取りやすさだけでなくワークライフバランスを保つためにも重要です。
オンコール体制があって件数も多いと、夜間や休みの日にもオンコール対応が求められ、プライベートの時間が確保しづらくなるためです。
オンコール体制を取っている訪問看護ステーションは多いものの、実際に稼働する基準や件数はそれぞれ異なります。
オンコール対応件数は、利用者さん1人あたり月3回が平均であるため、これを目安に転職先を検討するとよいでしょう。
訪問看護は休憩もとりにくい?1日のスケジュールとは
「訪問看護は休憩がとりにくいのでは」と考える方もいらっしゃいますが、そうとも限りません。
1日のスケジュールを見てみましょう。
時間 | 仕事内容 |
---|---|
8:30 | 出社情報収集申し送り移動(車、自転車、徒歩など) |
9:00~12:00 | 1~3件の訪問 |
12:00~13:00 | 車内や事業所などで昼休憩 |
13:00~17:00 | 2~3件の訪問 |
17:00~17:30 | 看護記録の記載つぎの日のスケジュール確認重要事項の申し送り退社 |
1件あたりの訪問時間は、30分〜1時間です。
移動方法は地域によって異なり、自動車や自転車が一般的です。
自転車の場合は数分の距離で済むため、訪問看護ステーションに帰社して休憩を取る傾向です。
自動車移動では車内で休憩することが多く、わざわざ訪問看護ステーションに戻らなくてよいメリットがあります。
スムーズに訪問が進めば、移動の合間に休憩が取れ、残業もほとんどありません。
訪問看護の休みやすさは事業所で違う!ライフスタイルに合う職場を見つけよう
訪問看護は「休みがない」と言われがちで、その背景にはオンコール対応や人手不足が関係しています。
とはいえ日々の休憩までも取れないわけではなく、残業も少ない傾向です。
休みやすい訪問看護ステーションを選ぶポイントとして、オンコール件数の少なさや余裕のあるスケジュール管理、スタッフ間の密な連携があげられます。
自分に合ったステーションを選べれば、ワークライフバランスを整えやすくなるはず。
転職前に事業所の勤務実態を確認し、安心して働ける環境を見つけましょう。