転職を検討している看護師の中には、年齢や人間関係などの理由からさまざまな不安を抱えている方もいるかもしれません。
「今の職場環境は、体力的にもきつくて子育てしながら続けるのは難しいな…」
「看護師の仕事は好きだけど、人間関係のストレスで辛いな…」
「スキルアップの機会が少ないから、もっとスキルアップできる職場はないかな?」
「メンタル的にきついからもう少しゆったりとした場所で働けないかな?」
「今の年齢で転職しても大丈夫なのかな?」
本記事では、20代から50代以降まで年齢別の転職事情やおすすめの転職先を紹介します。
年齢を重ねても働き続けられる職場や転職の不安を解消する方法も合わせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
看護師は何歳まで働けるのか?
看護師は、看護師国家資格を取得すれば働く年齢に制限がありません。
一般的に定年を60歳と定めている病院もありますが、再雇用で60歳以降も働き続ける人も少なくありません。
実際に、60歳以降でも働き続けている看護師は、12万人以上と全体の9%を占めています。
定年後も、培ってきた経験や技術を活かして生涯現役として活躍し続けられるのが、看護師の魅力の一つです。
また、働く意欲がある人が働き続けられる環境づくりのために、55歳以上の看護師等の就業を促す取り組みも行われています。
看護師として働く上で年齢制限はないので、自分のライフステージに合った労働環境や働き方を見つけるためにも「転職」が選択肢の一つとなるでしょう。
参照:厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概状(p.11)」
年齢別に見る看護師の転職事情
看護師の転職事情は年齢ごとに転職の理由や職場選び、働き方が違ってくるでしょう。
年齢別に、それぞれの特徴や転職のヒントについてご紹介します。
20代看護師の転職ポイントと自己PRの例
20代看護師が転職する上で注意したいポイントと、自己PRの例についてご紹介します。
20代の若手看護師が転職する理由として以下が考えられます。
- 夜勤やハードな仕事を受け持つのが体力的にきつい
- 上司や先輩など人間関係にストレスを抱えている
- 自分のスキルアップ・キャリアアップをしたい
- 仕事と給料が見合っていないと感じる
看護師には「3年目で一人前」といった言葉があるように、20代の看護師の中には「数年間この職場で頑張たら転職をしよう」と考えている人もいるでしょう。
転職先が求めるスキルや転職のポイントを知り、転職に役立てましょう。
20代の看護師の転職ポイント
20代看護師の転職ポイントは以下の4つです。
- 転職理由を明確にして、正当性を持たせる
- 転職する職場に求める条件を明確にする
- 長期的に働きたいことをアピールする
- 転職先で自分が貢献できるスキルや知識を持つ
職場の人間関係や労働環境から「今の職場はなんとなく違う気がする」「とにかく転職したい」と、正当な理由のない転職は注意が必要です。
特に、20代前半や経験の浅い看護師に対して転職先が持つ不安要素には、「また、すぐに辞めてしまうのではないか」といった思いがあるでしょう。
転職先に、明確な理由・正当性のある理由を提示し、安心してもらうことが転職成功につながります。
ライフイベントや将来の目標などを考慮して、転職する上での条件を明確にすることも重要です。
条件を明確にせず転職先を決めてしまうと、自分の思い描いていた職場ではなかったと感じ、転職が失敗する場合もあるので注意しましょう。
また、20代の看護師の転職では、長期的に働きたいことをアピールすることが重要です。
転職先が20代の看護師に期待することとして、以下があります。
- 20代だから長期的に働いてくれそう
- 考え方も柔軟ですぐに職場に適応できそう
- 若くて体力があるから夜勤などの負担が大きい業務も任せられそう
看護師不足の中、若くて体力がある20代の看護師は需要が高く、転職しやすい傾向にあります。
転職先が20代の看護師に期待することや、求められている能力について知り、それに伴ったアピールをすることも大切です。
20代の看護師といっても、勤務先や経験年数によってスキルや知識が異なります。
面接で聞かれた際には、自分の経験してきた看護技術や役割など、貢献できることを積極的に提示しましょう。
20代看護師の転職は何年目から?|自己PRの例
経験値が低いため転職に不利に働く可能性もありますが、看護師の転職は1年目であっても可能です。
医労連の調査によると、看護師の勤続年数は5年未満が約40%と、5年以内に退職や転職をしている看護師が多いことがわかります。
しかし、中途採用の条件として経験年数が記載されていることもあり、1年目看護師を中途採用する職場は限られています。
4年目以降の看護師は、業務を自立して行えることや、委員会や学生・新人指導・リーダー業務など任せられる仕事が多いため、転職先からの需要も高いです。
「転職経験がある」という看護師は全体の50.5%と、職場を変えながら働いている看護師も多くいます。
アピールポイントと自己PRの例を参考にしてみてください。
勤続年数 | アピールポイント |
1年未満 | ・コミュニケーション能力の高さ・学習への意欲の高さ・基本的な看護知識を備えていること |
2年目 | ・基本的な看護知識を備えていること・自立して行える看護技術がある・夜勤経験がある・体力がある |
3年目 | ・即戦力になれる・キャリアアップや専門性を高めたい・3年間働いた実績がある |
4年目以降 | ・即戦力になれる・専門的な知識や技術・リーダー業務・委員会・新人指導の経験 |
勤続年数 | 自己PRの例 |
1年未満 | 私の強みは学び続ける向上心があることです。看護学生の頃から、看護技術を行う前の事前学習や復習を徹底して行ってきました。新しく受け持った患者さんの病態の学習や看護計画の実施状況についても自己学習し、わからないことは先輩看護師に質問するようにしていました。 |
2年目 | 私の強みは体力があることです。学生の頃はバスケ部に所属し、今もジムに通っています。急性期病棟で勤務経験があり、身体介助が必要な患者さんのケアも自立して行えます。入職後から遅刻や欠勤なく、健康管理も徹底して行っています。 |
3年目 | 私の強みはチャレンジ精神があることです。前の職場では精神科と神経科の混合病棟でしたが、より専門性を高めたいと思い、貴院に転職を考えています。今まで自己学習や研修・学習会などを通して常に新しい知見を学んできました。 |
4年目以降 | プリセプターとして新人教育にも携わった経験があります。自分の仕事と新人看護師の指導を両立し、マネジメント力を高めてきました。また、覚える速度やスキルは個人差があり、新人の特性などを理解しながら指導を行っていました。 |
これまでの経験を活かした自己PRを行い、転職先に自分の強みをアピールしましょう。
30代看護師の転職で評価されるスキルと心構え
30代看護師が転職で評価されるスキルや、持つべき心構えについて解説します。
30代の転職理由としては以下が考えられます。
- ライフステージの変化
- 体力低下で夜勤が辛い
- 仕事と給料が見合っていない
- 将来的なキャリアアップが望めない
30代の看護師は即戦力となり、培ってきた看護技術や知識を活かして働けるため、転職先からも需要が高いです。
転職を有利に行うためにも、転職先から30代看護師に求められるスキルや評価される点、転職前に持つべき心構えについて確認しましょう。
30代の看護師が転職で評価されるスキル
30代の看護師は、看護師としての知識や技術だけでなく、リーダーシップや将来性も評価されます。
自分のスキルや経験だけでなく、学習意欲や前向きさもアピールすることが大切です。
将来性や自己成長に向けた学習意欲やリーダーシップ・まとめる力も30代看護師の強みになってきます。
同じ30代前半の看護師であっても過去に配属された病棟・勤務年数・教育体制などによって経験値は人それぞれです。
今までの経験や実績に加え、新しい職場で自分が貢献できることをアピールすると良いでしょう。
30代看護師が持つべき転職の心構え
30代看護師の転職では、即戦力として期待され、新人教育やリーダーとしての役割を任せられる可能性があることを知っておきましょう。
30代の看護師は、中堅としての役割や即戦力として求められることが多いです。
また、即戦力として新人指導やリーダー業務、委員会の参加なども任されるかもしれません。
30代の看護師の転職は条件を明確にして、しっかりと条件提示することが必要です。
プライベートと両立させるために転職を考えている方は、職場の勤務体制や時短勤務が可能かなど、転職先に求める条件を明確にしましょう。
一方で、スキルアップや将来的なキャリアを理由に転職を考えている人も、転職先でその希望が叶えられるのか事前に確認しておくと良いでしょう。
30代看護師が転職先に求められていることを把握し、転職で叶えたい働き方と合わせて検討することが大切です。
40代看護師が意識すべき戦力と職場選び
40代の看護師が転職をするときには、経験を積んだベテランとしてすぐに活躍できるという意識を持つことが重要です。
40代の看護師が転職をする理由としては以下が考えられます。
- 子育てがいったん落ち着いたので、働き方を変えたい
- 管理職などキャリアアップしたい
- 夜勤や残業の少ない職場でゆとりを持って働きたい
40代の看護師は経験が豊富なベテランで、即戦力となる貴重な存在です。
ベテラン看護師として重宝される40代看護師が、転職の際に意識すべきことや職場選びで注意することを事前に確認しておきましょう。
40代の看護師が意識すべき転職戦力
転職活動をスムーズに進めるためにも、40代の看護師が意識すべき自分のポテンシャルについて知っておきましょう。
40代の看護師がアピールできる戦力は以下です。
- 経験や知識が豊富ですぐに即戦力となれる
- 責任のある仕事を任せられる
- 新人教育やリーダーなどの経験が豊富
経験が豊富で十分なスキルを身につけている看護師は、ベテランとして優遇されます。
また、40代は女性のライフステージが変化しやすい結婚や妊娠・出産などによる休職や、退職の不安が少ないと考えられています。
そのため、新人指導やリーダー・管理職候補など、責任を伴う仕事を任せられることも強みです。
今後の働き方を見据えた40代看護師の職場選び
40代の看護師でも転職は可能ですが、50代以降からは転職の市場が変化してくるため、慎重な職場選びが必要です。
50代以降も仕事を続けていきたいと考えている方は、転職先の勤務体制や仕事内容など、自分の体力面を考慮して選ぶことも大切です。
新しい職場に求める労働環境や給料など、自分の転職に向けた条件を明確にして、転職先が適しているか確認するようにしましょう。
今後も長く働き続けたいと考えている人は、40代のうちから将来のキャリアプランを考慮した職場選びをすることが重要です。
50代以上の看護師が転職を成功させるヒント
50代以上の看護師が転職を成功させるヒントについて紹介します。
看護師に年齢制限がないように、50代以上でも看護師の転職は可能です。
50代以上の看護師の中には、体力的に負担が少ない職場や定年後も働き続けられる職場を探している人も多いのではないでしょうか。
実績や経験を活かした転職をするためのポイントは以下です。
- スキルや実績を活かせる
- 管理者などのポジションが目指せる
- 定年後の再雇用制度がしっかりしている
- 柔軟な勤務体制が整っている
- ブランクがあっても受け入れてくれる
今後のキャリアプランを明確にし、看護師として長年の経験やスキルを活かし、体力的にもゆとりを持って働ける職場選びをしましょう。
看護師の職場ごとの年齢別受入れ状況
職場ごとの看護師の受入れ状況は、年代によって異なります。
看護師は、ライフステージや自分の体力面なども考慮しながら、働く環境を変えていることが多いです。
20代~30代は病院勤務が多い
20代〜30代前半の約8割以上の看護師は、病院で勤務しています。
病院の勤務は教育体制が整っていることが多く、新人看護師などに選ばれています。
病院は夜勤やシフト制など不規則な勤務体制なこともあり、体力的にも若い年代の看護師を受け入れることも多いです。
30代後半から診療所や介護施設が増えてくる
30代後半から、病院での勤務から診療所や介護施設などに転職する看護師が増えていく傾向にあります。
結婚・妊娠・出産などライフステージの変化により、病院での勤務が難しい看護師は、プライベートとの両立のために転職をすることもあるでしょう。
50代になると病院に勤務する看護師は50%以下です。
就業率 | 病院 | 診療所 | 介護保険施設 |
20代前半 | 93.6% | 2.8% | 1.0% |
20代後半 | 84.1% | 7.3% | 2.6% |
30代前半 | 75.7% | 10.5% | 4.4% |
30代後半 | 67.9% | 14.1% | 6.4% |
40代前半 | 54.6% | 17.9% | 8.6% |
40代後半 | 48.4% | 20.8% | 10.1% |
50代前半 | 48.4% | 23.5% | 12.5% |
50代後半 | 45.0% | 22.6% | 16.5% |
60代前半 | 39.2% | 21.6% | 23.2% |
60代後半 | 28.4% | 21.8% | 33.6% |
引用:厚生労働省:看護師等の確保を巡る状況に関する参考資料p.4
介護施設は、経験やスキルを活かしながら体力的にゆとりを持って働き続けられるので、50代以上の看護師に特に人気の就業先です。
急性期病院や大学病院に必要なスキルと年齢層
急性期病院では、緊急時の対応や介助を必要とする患者が多く、入退院が激しいので20代~30代が多く採用されるのが特徴です。
病院は不規則な勤務体制のため、若くて体力のある看護師は需要が高いです。
また、幅広い専門知識や看護技術はもちろんですが、冷静な判断スキルや迅速に対応できる行動力も求められます。
大学病院は、教育機関であることからも新人教育に注力しています。
経験を積んで即戦力となる中堅看護師や、新人教育ができるベテラン看護師も需要が高いです。
年齢制限を設けている職場はほとんどありませんが、夜勤などの不規則な勤務体制、業務内容からも体力がある人が必要とされています。
慢性期病棟や訪問看護でのベテランの需要
慢性期病棟や訪問看護では、30代以降のベテラン看護師の需要が高いです。
慢性期の看護や訪問看護では、患者さんの少しの変化に気づき、状況によって的確な判断ができる高度な能力が求められます。
看護技術だけでなく、患者さんと家族の日常的なサポートや思いの傾聴など、精神的なサポート力も必要です。
訪問看護師は1人で利用者さんの自宅を訪問することもあるため、長年の経験や知識を持ったベテラン看護師は即戦力となります。
慢性期病棟や訪問看護では、地域や保健師との連携なども求められ、ベテラン看護師の需要はとても高いです。
年齢を重ねても働ける看護職の選択肢
看護師には働く年齢制限がないため、年代ごとの選択肢について紹介します。
クリニックや介護施設での働き方
クリニックや介護施設では、30代以降の即戦力として働ける看護師の需要が特に大きいでしょう。
クリニックは地域医療を担い、少人数の看護師で業務を行います。
また、夜勤がない場所が多いため、仕事とプライベートの両立がしやすいです。
介護施設は病院と比較すると急な入院や残業が少ないことから、ゆとりを持った働き方ができるでしょう。
基本的な看護技術だけでなく、患者さんの細かい変化に気づける観察力も求められ、経験を積んだ看護師は即戦力として需要が高いです。
保育園や看護学校の教員への転職
30代以降の看護師は、病院以外にも保育園や看護学校の教員という選択肢があります。
厚生労働省は保育園に看護師を常駐させることを促進しており、保育園看護師は園児の体調管理や指導など、さまざまな業務を行います。
夜勤がなく日曜・祝日が休みのため、プライベートの時間をしたい人にはおすすめです。
子どもと関わる機会が多い職場なので、コミュニケーションスキルや小児看護の知識・子育て経験なども重視されるポイントでしょう。
また、看護学校や大学の看護学科で、看護師を目指す学生に看護技術や知識を教える教員という選択肢もあります。
看護教員になるためには、既定年数以上の実務経験や養成課程を修了するなど、いくつかの条件があるので注意が必要です。
看護師は病棟や医療施設での勤務以外にも、保育園や看護学校など仕事の選択肢はさまざまです。
定年後も活躍するために準備すること
定年後も看護師として活躍し続けるためにも以下のことを準備しておきましょう。
- 今後の人生のキャリアについて考える
- リーダーシップや指導力・育成力を高める
- 定年後のキャリアや働き方を見据えた転職
看護師として定年後も働き続けたいと思っている人は、定年後の再雇用がある職場で働くことがおすすめです。
長年の経験から看護技術や知識は十分に備えているベテラン看護師でも、若い看護師や学生指導など次の世代を育成する力をつけておくことが大切です。
自分の好きな年齢まで働き続けられるよう、事前に準備をしておきましょう。
看護師転職で年齢の不安を解消する方法
看護師の転職で年齢による不安を解消する方法としては、転職サイトの活用や資格取得で可能性を広げるのが有効です。
ここでは、その理由を一つずつ紹介していきます。
転職サイトの活用術
転職サイトを活用することで、看護師の転職をスムーズに進められます。
看護師向けの転職サイトに、希望する職場の種類や雇用形態など条件を入力し、検索することで自分に合った転職先を見つけられるでしょう。
年齢や経験に合わせて最適な転職先を紹介してくれるうえに、面接対策や書類作成もサポートしてくれるサイトもあります。
転職が初めてという方や、自分の年齢や経験を活かした転職ができるか不安という方でも安心して利用できます。
仕事の休憩時間やすきま時間に転職先を探せて、非公開の求人も掲載されているため、選択肢が広がるのが強みです。
転職を考えたらまずは、転職サイトに登録をしてどのような求人があるのか確認してみましょう。
資格取得で可能性を広げる
看護師の転職を有利に行うために、新しく資格を取得することもおすすめです。
年齢に不安を感じている方は特に、資格を取得することで他の人との差別化につながり転職が有利に行えるでしょう。
専門性の高い「専門看護師」「認定看護師」の資格を取得することで、給料が上がることもあります。
専門看護師や認定看護師はどの分野においても需要が高く、転職でキャリアアップを目指している人にもおすすめの方法です。
看護師転職は何歳まででもOK!自分の強みや経験を活かした転職をしよう
看護師は何歳でも働くことができ、転職に年齢制限はありません。
年齢ごとに転職で求められるスキルや注意点が違うため、自分の強みや経験をアピールすることが大切です。
また、転職をしたい理由や譲れない条件を明確にしておくことが転職成功のためには重要です。
看護師として好きな年齢まで働き続けるためにも、転職に迷っている方はぜひ、参考にしてみてください。