「クリニカルラダーは、看護師の転職やキャリアに必要なのだろうか」と疑問に感じたことはありませんか?
看護師にとってクリニカルラダーは、重要な役割を果たしています。
この記事を読むと看護師がクリニカルラダーを活用し、自分らしく働く場所を見つけるためのヒントや、転職をする際に知っておくと役立つことがわかります。
看護師の転職でクリニカルラダーは必要?
クリニカルラダーを取得している看護師かどうかは、病院が採用時に求めてくる場合もありますが、必須としているところは少ないのが現状でしょう。
看護師の転職で、クリニカルラダーがどのように活用されるかをみていきます。
クリニカルラダーは転職に有利か
病院によっては、クリニカルラダーを導入していないところもあるため、有利になるかは施設によるでしょう。
導入していない病院では、クリニカルラダーについて詳しくないため、看護師を評価しづらいというのが現状です。
一方でクリニカルラダーを導入している病院は、看護師の能力を段階的に示せるため、看護師の能力評価をしやすいと言えるでしょう。
求人によっては、クリニカルラダーのレベル提示が必須となる場合も。
転職時にクリニカルラダーのレベルを伝えることで、自分のキャリアを示すことに役立つでしょう。
クリニカルラダーを転職で活用するために
クリニカルラダーのレベルを転職先の病院に伝えると、看護師として教育制度が整ったところで技術や知識を学んできたことが、相手側に伝わります。
クリニカルラダーの内容を理解している看護師は、少ないのが現状です。
自分から内容を理解してレベルアップに取り組んできたと伝えると、転職先にキャリア形成を考えた看護師として評価されるでしょう。
クリニカルラダーのレベルと、今後学んでいく必要がある点を、評価項目にそって病院側に伝えると良いでしょう。
クリニカルラダーのレベル別目標
日本看護協会が公表した「看護師のクリニカルラダー」は、看護の核となる能力に5段階のレベル(I〜V)をつけて、習熟度を示しています。
看護の核となる能力は「ニーズをとらえる力」「ケアする力」「協働する力」「意思決定を支える力」の4つとなっています。
レベルI
レベルIは「基本的な手順に従い、先輩の助言を得ながら看護を実践できる」が目標です。
ケアの受け手に必要な身体的・社会的・精神的・スピリチュアルな側面から情報を集める力は、看護師の土台となります。
患者さんを取り巻く関係者や、医療を提供するチームと情報共有を行い、連絡・報告・相談ができることを求められるでしょう。
意思決定を支える時は、患者さんの思いや考えを知る段階です。
レベルII
レベルIIは「看護計画に基づいて、自立して看護が行える」が目標です。
自らケアの受け手のニーズを把握し、情報から患者さんの課題を考えることができる段階です。
個別性に対応するため、必要な情報を得たり、患者さんを取り巻く関係者と密にコミュニケーションをとったりする必要があるでしょう。
意思決定において、希望や思いをくみとり、看護に関連づけていくようになります。
レベルIII
レベルIIIは「ケアの受け手に合わせた個別的な看護を実践すること」が目標です。
得られた情報から、優先度の高いニーズを把握したり、潜在的なニーズもとらえ、看護に活かすことが必要となるでしょう。
多職種に協力を求め、連携をとり、意思決定に大事な情報を提供できるようになる段階です。
レベルIV
レベルIVは「幅広い視野を持って、予測して看護を行う」が目標です。
ケアの受け手から意図して得た情報について統合し、ニーズを理解する必要があります。
幅広い選択肢の中から、患者さんにとってニーズに沿った看護を行い、起こりうる問題を予測してケアを考える必要があるでしょう。
患者さんを取り巻く医療機関や多職種が、機能的に関われるよう、調整する役割も大切です。
レベルV
レベルVは「複雑な状況の中で最適な方法を選び、QOLを高める看護を行う」が目標です。
社会的・身体的に複雑な患者さんに、最適な看護を提供するため、ニーズをとらえ価値観に応じて対応するスキルが必要となります。
多職種の力を引き出し、連携させるマネジメントの役割も重要となるでしょう。
経験だけでなく最新の知見を取り入れて、複雑な問題に対処し、最適な看護は何か追求する姿勢が必要な段階です。
看護師がクリニカルラダーを活かした転職をするための職場選びのポイントは?
看護師が転職活動に取り組む時に、クリニカルラダーは職場選びにどのように関わってくるのでしょうか。
3つのポイントを見ていきましょう。
病院による評価の違い
クリニカルラダーはキャリアラダーの一部として活用されています。
キャリアラダーは看護師の専門的、実践的な能力だけでなく、管理的な能力や専門看護師といった、より専門性の高いスキルの段階も含みます。
キャリアラダーは、看護協会が提唱しているクリニカルラダーを施設の評価に組み込み、各施設の目指す医療・看護の内容とともに作られています。
人材が確保できず、教育計画を作る時間がないと、クリニカルラダーを活用できていない病院もあります。
導入している病院は看護の質を保証するため、教育に熱心だと一定の評価ができるでしょう。
導入していた病院での勤務経験があれば、転職時に教育を受けてきた看護師としてアピールできるメリットがあります。
働きやすい職場環境か
クリニカルラダーは職業を通じて、今後の生き方や、何を大切にしたいかを確認していく自己実現に向けたツールです。
導入すると評価の負担が増え、相手のことを理解しないと、ネガティブとなる側面もあります。
一方で、上司がポジティブなフィードバックを行い看護師の意思決定を支えると、優れたツールとなり、自己実現の手助けとなるでしょう。
良い評価が行われる職場は看護師にとって働きやすく、施設にとっても良い影響をあたえます。
クリニカルラダーがうまく機能している病院であれば、仕事を通じて充実した看護師のキャリアが形成できるでしょう。
キャリアアップ支援の有無
クリニカルラダーのレベルをあげるために、院内や院外研修の参加が必要なケースもあります。
看護の研修であれば、病院側が研修の費用を支払ってくれる場合も。
キャリアアップを目指す場合は、研修に参加し続ける必要があります。
取得した資格も、数年おきに更新が必要となり、有給をとって参加するケースもあります。
金銭面で補助がでるとモチベーションの維持にもつながり、勉強を続けやすい環境となるでしょう。
研修の補助制度の有無は、転職時に確認しておくと安心です。
クリニカルラダーの評価を看護師の転職で活用する時の注意点
クリニカルラダーは看護師のライフスタイルやキャリア形成にとって、重要な役割をはたしている一方で、現場で十分に活用できていない実態があります。
看護師の転職でクリニカルラダーを活用して、転職活動を行う時の注意点について見ていきましょう。
クリニカルラダーを導入していない病院もある
クリニカルラダーの導入は、内容を熟知し病院の機能や部署によってどう活用するか議論を重ねていく必要があります。
人材と時間が足りず、取り組めていない病院もあるでしょう。
今までクリニカルラダーを活用してキャリア形成を行ってきた看護師は、病院が変わると今までの評価は使えない場合もあります。
クリニカルラダーの項目全てが自分の能力を示す指標ではない
クリニカルラダーは自分の評価と他者の評価に差がでる可能性があります。
評価者によっても、偏見や思い込みも含まれ、正しい評価であるかわからない場合も。
自分の能力が、クリニカルラダーで全て示されるわけではありません。
またレベルが最上位まで上がると、研修などで知識を身につけても評価されず、モチベーションを保ちづらいスタッフもいるでしょう。
全ての評価ツールが万全でないように、クリニカルラダーも完璧ではありません。
クリニカルラダーのレベルだけではなく、自身のアピールポイントを見つけておきましょう。
クリニカルラダーは看護師のキャリア開発に役立つ!職場環境を見直して自分のなりたい姿を見つけよう
クリニカルラダーは、看護師のキャリアに役立つシステムです。
しかし完璧ではありませんし、十分に活用されていない実態もあります。
自分からクリニカルラダーに興味を持ち、活用しようとすれば、今後のキャリア形成に活かすことができるでしょう。
もし今の職場がクリニカルラダーを活用していなければ、教育や研修制度に満足できるか評価することも大切です。
看護師の働き方や生き方を充実させるため、看護師としてキャリアアップを考える場合は、クリニカルラダーの制度を取り入れている病院で働くことも選択肢となるでしょう。
参考図書:加藤由美(2019).『クリニカルラダー&マネジメントラダー ラダー作成・運用・評価「最強」マニュアル』.メディカ出版.