「人間関係が上手くいかなくて、職場で孤立してしまった。」
「看護師に向いていない気がする。」
このような悩みを抱えている新人看護師は多いのではないでしょうか。
看護師1年目は、環境や仕事に慣れるだけでも大変で、「辞めたい」気持ちが生まれてしまうのも無理はありません。
しかし、退職する際は「勢いで辞める」のではなく、自分の気持ちや状況を冷静に整理したうえで判断することが大切です。
この記事では、1年目で辞めたくなる理由や実際の離職率をご紹介します。
1年目で転職する際のメリット・デメリット、転職成功のポイントまで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
1年目で看護師を辞めたくなる理由
看護師は「人間関係の悩み」や「適性への不安」など、辞めたくなる瞬間が多い職業です。
なかでも、看護師1年目は慣れない環境やプレッシャーから、特に悩みを抱えやすい時期。
ここでは、そんな1年目の看護師が直面しやすい代表的な悩みをご紹介します。
人間関係の悩みを抱えてしまう
看護師1年目は人間関係に悩みやすい時期です。
同期とうまくいかなかったり、先輩看護師が厳しくて話しかけづらかったり、毎日プレッシャーを感じながら出勤している人もいるでしょう。
また、職員同士の雑談に入れず孤独を感じてしまい、「このまま続けられる気がしない」「もう辞めたい」と感じる新人看護師も少なくありません。

休みの日に研修や勉強会に参加させられる
看護師1年目は、毎日慣れない業務に追われるため、心身ともにヘトヘトになりやすい時期です。
にもかかわらず、休日には研修や勉強会への参加を求められることも少なくありません。
せっかくの休日も病院の予定で埋まり、プライベートの時間が確保できず、「いつ休めばいいの?」と感じる場面が増えがち。
「自己研鑽」という扱いで無給にされるケースもあり、納得できず辞めたい気持ちが強まることもあります。
サービス残業が当たり前になっている
看護師1年目は、30分〜1時間以上早く出勤して情報収集をする「前残業」が当たり前のように求められます。
また、定時後も先輩からの教育・指導に加え、記録業務や委員会、勉強会などがあり、長時間の残業でなかなか帰れない日々が続くことも。
1年目の業務に慣れていない時期から長時間働き続けていると、心身の負担が大きくなりがちです。
限界を迎えて「もう無理、辞めたい」と感じてしまう看護師がいるのも無理はありません。
看護師に向いていないと感じる
看護師1年目は、毎日新しいことの連続で知識も技術も追いつかず、戸惑う場面が多くなりがちな時期です。
そんな中で先輩や医師に叱られたり、嫌味を言われたりすると、自信をなくしてしまうこともあるでしょう。
また、インシデントやアクシデントを起こしてしまうと、「自分は看護師に向いていないのでは」と悩み、辞めたい気持ちが芽生えることもあります。

プレッシャーに耐えられない
看護師は人の命を預かる責任の重い仕事です。
小さなミスが患者の状態に大きく影響する可能性があるため、常に緊張感を持って行動する必要があります。
しかし、看護師1年目はまだ知識も経験も不十分で、何が正解かわからず迷うことばかり。
そんな中で「絶対にミスは許されない」と感じると、プレッシャーで心が押しつぶされてしまいます。
理想と現実のギャップに直面する
看護師1年目は、思い描いていた理想と現場の現実とのギャップに戸惑いやすい時期です。
想像以上の忙しさに追われ、タスクをこなすだけで精一杯になってしまい、「自分がやりたかった看護ってこうだっけ?」と感じることも。
また、患者や家族から心無い言葉をかけられたり、暴力を受けたりすることもあり、理想と現実のズレに大きなショックを受けてしまうこともあります。
1年目看護師の離職率
実は、看護師1年目で「辞めたい」と感じるのは珍しいことではないんです。
日本看護協会の調査によると、2022年度に就職した新卒看護師の離職率は10.2%でした。
つまり、新人看護師のうち「10人に1人が1年以内に離職している」ことになります。
2021年度に初めて10%を超えて以降、高い水準が続いており、現場の厳しさやフォロー体制の不十分さが明らかになってきているのが現状です。
1年目で看護師を辞めたいと感じた時にするべきこと
看護師を辞めたいと思ったからといって、すぐに退職するのはあまりおすすめできません。
退職を決める前に、まずは周囲の人に相談したり、心身を休ませる期間を作ってみたりすることが大切。
ここでは、「辞めたい」と感じたときに取るべき行動や考え方について、詳しく解説します。
先輩や上司に「辞めたいと感じている」ことを相談する
もし1年目で「看護師を辞めたい」と感じたら、信頼できる先輩や上司に気持ちを打ち明けてみてください。
すぐに解決策が見つかるとは限りませんが、「悩みを聞いてくれる人がいる」という事実があるだけでも、心が少し軽くなるものです。
また、今は頼れる立場にいる先輩たちも、かつては同じように悩んでいた時期があり、またそれを乗り越えてきた経験があります。
自分では気づけなかった視点からのアドバイスや、具体的な解決策をもらえることもあるので、ひとりで抱え込まず、まずは相談してみましょう。
心身を休ませる期間を作る
「辞めたい」と感じるほどつらいときは、無理に頑張り続けるのではなく、まずは心と体を休ませましょう。
短期間でも看護の仕事から離れてみると、気持ちが少し落ち着いたり、自分の状況を客観的に見られるようになったりすることもあります。
また、不眠や頭痛などの明らかな不調が出ている場合は、一度しっかり休職することも大切。
無理を重ねると「看護師そのものを嫌いになる」可能性もあるので、まずは自分を守るために心身を休ませる期間を作りましょう。
周囲の看護師と比較するのを辞める
周囲の看護師と自分を比べて、「自分はできていない」と落ち込んでしまう人は多いのではないでしょうか。
知識や看護技術の習得スピードは人それぞれで、コミュニケーションの取り方や人間関係の築き方にも個人差があります。
同じ職場に自分より優秀な同期がいたとしても、それを気にして落ち込む必要は全くありません。
もし、どうしても誰かと比較して落ち込みそうなときは、「少し前の自分」と「今の自分」を比べてみてください。
「少し前の自分」よりはできることが増えているはずなので、焦らず自分のペースで成長していきましょう。
看護師が1年目で転職するメリット
「看護師1年目で転職する」という行動は、ネガティブに捉えられがちですが、実はそうとも限りません。
早い段階で転職すると、「心身の負担を軽減できる」、「キャリアの方向性を早期に修正できる」など、プラスに働く面もあります。
ここでは、1年目で転職する具体的なメリットについてご紹介します。
メンタル・体力的な負担を軽減できる
労働環境が過酷だったり、人間関係に強いストレスを感じていたりすると、心身が限界を迎えてしまう場合もあります。
一度メンタルが崩れてしまうと、回復するまでに長い時間がかかることも少なくありません。
その状態で無理に仕事を続けていると、「もう看護師として働きたくない」と感じてしまう可能性も。
そうなる前にストレスの原因から離れておくと、心身の消耗を抑えられるため、結果的に看護師を長く続けることに繋がります。
キャリアの方向性を早期に修正できる
働き始めてから、「思っていた仕事内容と違う」「自分のやりたい看護ができない」と感じる看護師は多いです。
違和感を抱えたまま働き続けていても、モチベーションが下がり、仕事に前向きになれなくなってしまうこともあるでしょう。
そんな時、早い段階で方向性を見直しておけば、その分だけ早く軌道修正が可能。
無駄な遠回りをすることなく、「自分のやりたい看護」「自分がなりたい看護師像」に近づけます。
転職先で新人扱いしてもらえる
1年目で転職すると、転職先でも「経験の浅い新人」という扱いを受けやすいため、過度な期待をされずに済みます。
そのため、先輩にも気軽に質問しやすく、わからないことを素直に聞ける環境が整いやすいのもメリットです。
また、職場によってはプリセプターをつけてもらえることもあり、マンツーマンで丁寧な指導を受けられる可能性もあります。
「新しい環境でゆっくり学び直したい」人にとっては、早期転職はメリットが大きいと言えるでしょう。
看護師が1年目で転職するデメリット
ここまで早期転職のメリットを紹介してきましたが、「1年目の転職」には当然デメリットもあります。
転職を考える際は、メリットだけでなくデメリットにも目を向けたうえで、納得のいく判断をすることが大切です。
ここでは、「看護師が1年目で退職するデメリット」をご紹介します。
採用担当者に悪い印象を持たれやすい
1年目での転職は、「すぐに辞めてしまう人」という印象を持たれやすく、面接でも退職理由や転職理由を深く突っ込まれやすくなります。
その際、職場の環境のせいにしたり、理由をうまく説明できなかったりすると、「またすぐ辞めてしまうのでは」と判断されやすいので注意が必要です。
そのため、面接では「なぜ辞めたのか」「転職先で何をしたいのか」など、自分の言葉で伝えられるようにしっかり準備しておきましょう。
応募できる求人が限られる
年度途中の求人は欠員補充のため、一定の看護師経験を持つ人を対象とする求人が多くなります。
応募条件に「臨床経験◯年以上」などが設定され、1年目の看護師は応募できないことも。
また、応募先が小規模なクリニックの場合、教育体制などの側面から弾かれてしまうことも多くなります。
そのため、求人を探す際は「経験不問」や「新人歓迎」などの記載があるか、事前によく確認しておきましょう。
看護師が1年目で転職する時の注意点
1年目の転職や初めての転職は、分からないことがたくさんあるでしょう。
ここでは、「看護師が1年目で転職する時の注意点」について詳しく解説します。
転職先を見つけてから退職する
納得できる職場を選ぶためには、転職先が決まってから退職するのがおすすめ。
転職先が決まる前に退職してしまうと、安定した収入がないまま、新しい職場を探さなければなりません。
貯金が減ってくると焦りが生まれ「とりあえずここでいいか」と、自分に合わない職場を選んでしまうことも。
そうなると、「またすぐに辞めたくなってしまい転職を繰り返す」という負のスパイラルに陥ってしまいます。
退職するタイミングはしっかり考える
退職する際は、就業規則に「退職は◯ヶ月前までに申告」などの記載がないか、事前に確認しておきましょう。
規定がない場合でも、法的には「2週間前に申告すれば退職は可能」です。
しかし、直前に申告すると現場が混乱する可能性があるため、「1〜2ヶ月前」を目安に申告しておくのがおすすめ。
また、退職時期によってはボーナスの支給に影響する場合もあるため、支給日を意識してタイミングを決めるのも良いでしょう。
短期間で転職を繰り返さない
転職は回数を重ねるごとに、採用側からの印象が少しずつ悪くなっていく傾向があります。
特に、「入職して数ヶ月で辞めた」という早期離職が続いていると、「またすぐ辞めてしまうのでは」と警戒されやすくなります。
そうなると、せっかく良い求人を見つけても、書類選考の段階で落とされる可能性も。
転職を繰り返さないためにも、「長く働けそうな職場か」をしっかりと見極めましょう。
看護師1年目で転職を成功させるためのポイント
「看護師1年目の転職」を成功させるためには、なんとなく職場を選ぶのではなく、自分に合った職場選びが必須です。
ここでは、転職を成功させるために押さえておくべき「4つのポイント」をご紹介します。
教育体制が整っている職場を探す
1年目で転職する場合は、教育体制がしっかり整備されている職場を選びましょう。
教育体制が不十分な職場では、「見て覚える」「とりあえずやってみる」が基本になり、自分から積極的に学びにいく場面が多くなります。
一方で、教育に力を入れている大規模な病院やクリニックでは、新人研修や院内研修、プリセプター制度などが整っていることが多いです。
丁寧な指導を受けて自分のペースで成長できる職場を選ぶと、1年目でも転職が成功しやすいといえます。
自己分析をする
職場探しを始める前に、自分自身を振り返る「自己分析」をする時間を作りましょう。
たとえば、「なぜ看護師を目指したのか」「どんな看護師になりたいのか」といった原点を思い出すと、自分が大切にしたい価値観が明らかになります。
また、やりたいこと・やりたくないこと、得意なこと・苦手なこと、職場に求める条件などを整理しておくと、「転職の軸」が定まります。
このように、最初に自己分析をしておくと、希望条件に合った職場を探しやすくなり、転職後のミスマッチも防げるのです。

事前に病院見学をしておく
転職先の候補が絞れたら、面接にエントリーする前に病院見学をしておくのがおすすめ。
実際に足を運ぶことで、職場の雰囲気やスタッフ同士の関わり方、患者さんへの接し方などを直接見ることができます。
特に、人間関係が原因で今の職場を辞めたいと感じている場合は、見学を通して「この職場でうまくやっていけそうか」を考えましょう。
また、スタッフが常に忙しそうにしていないか、安全に働ける環境かどうかもチェックしておくと、転職後の「こんなはずじゃなかった」を防げます。

転職サイトや転職エージェントを活用する
転職は、退職の準備や求人探し、面接対策などやるべきことが多いです。
忙しい毎日に追われながらひとりで進めるのは、大変に感じることもあるでしょう。
そんな時は、看護師転職サイトや転職エージェントを活用するのがおすすめ。
自分に合った求人を紹介してくれるほか、履歴書の添削や面接対策のサポートも受けられるため、楽に転職活動を進められます。
また、一般には出回っていない「非公開求人」を紹介してもらえる場合もあり、一人で探すよりも選択肢が広がるのもメリットです。
1年目で看護師を辞めるのは悪いことじゃない!自分に合った選択をしよう
看護師1年目で「辞めたい」と感じるのは、決して珍しいことではありません。
この記事でご紹介した通り、「新人看護師の10人に1人が早期退職している」というデータもあります。
1年目の転職は、「心身の負担を軽減できる」などメリットがある一方で、「採用で不利になる」「応募できる求人が限られる」といったデメリットもあるのが事実です。
感情的に今の職場を辞めるのではなく、まずは「自己分析」や「病院見学」を通して、自分に合った環境をハッキリさせましょう。