このまま今の職場で働き続けていいのだろうか、自分の働きと給料が見合っていない、と悩んでいる看護師はたくさんいます。
なぜ多くの看護師は、給料や職場への不満を感じているのでしょうか。
その背景には、看護師を取り巻くストレスフルな職場環境があげられます。
この記事を読むと給料が安く、割に合わないと感じる理由がわかり、働く環境を選ぶヒントが得られます。
看護師の給料が安い・割に合わないと思う理由
看護師が給料と自分の働きが見合っていないと感じる背景には、膨大な仕事量と心身ともに疲弊しやすい状況があげられます。
ここでは、働く中で給料が割に合わないと感じる場面を、具体的に見ていきましょう。
終わらない仕事の量
看護師は、担当する患者さんの病気の状態だけでなく、点滴や検査のスケジュールなどたくさんの情報を知る必要があります。
患者さんは病気をいくつも抱えており、点滴や内服の管理も複雑な場合が多いです。
そのような患者さんを何人も担当しながら、手術や検査に付き添わないといけません。
頻繁にナースコールで呼ばれたり、患者さんの病状が悪化したりと、イレギュラーな対応に時間が取られ、スケジュール通りにいかない場合が多いでしょう。
就業時間が終わっても、記録が終わらず残業することは日常茶飯事です。
重い夜勤の負担
2交代制の場合、夜勤では16時から翌朝9時まで働く必要があり、人数が少ないため受け持ち患者さんが増える傾向にあります。
だいたい10人〜13人の患者さんを担当し、急変時の対応もしなくてはいけません。
病院によっては1人で20人以上担当する場合もあり、安全面の不安を抱えて働いているスタッフもいるでしょう。
不規則な勤務のため、心身への負担は大きく、睡眠に影響がでる場合もあります。
不要と感じる記録や書類関係
病院の取り決めや病状を伝える用紙など、看護師はたくさんの書類を患者さんに渡します。
書類の渡し忘れなどにも繋がるほどの膨大な書類は、看護師の負担になっているでしょう。
記録に関しては、病状の重い、軽いに関わらず同じように入力するため、どんなときでも同等の時間がかかってしまいます。
書類の量は病院によって異なりますが、看護師が行う手続きは多い傾向にあり、疲弊の原因となっているでしょう。
委員会や看護研究などの業務
新人看護師以外は、担当を割り当てられ、委員会に定期的に参加します。
接遇委員や看護研究委員、教育委員などいくつもあり、人手が足りないと兼務しなくてはいけません。
看護業務をしながら委員会にも出席するため、もちろん負担が増えます。
特に看護研究では、数人で話し合ったり看護計画書を作成したりと、論文作成の時間を確保しないといけません。
患者さんを担当しながら他の作業にも時間を割くのは難しく、残業で対応する場合が多くなります。
研究のために論文を読んだり、資料を探したりする時間は時間外労働となり、不満を抱えるスタッフもいるでしょう。
化学療法の取り扱いや感染症へのリスク
がんを治療する患者さんの中には、化学療法といって抗がん剤を使用する方もいます。
抗がん剤はがん細胞を攻撃しますが、正常な細胞にも同じく影響を及ぼします。
看護師は自分の体を守るため、手についたり、口から吸い込まないようにしたり、慎重に対応しなければなりません。
特にコロナのときは、防護具が充分でなくても、感染している可能性がある人に対応しないといけませんでした。
普段から血液を取り扱う場面もあり、未知のウイルスへの感染リスクもあります。
健康へのリスクを抱えながら業務を行っている点でも、負担が大きいと言えるでしょう。
体位変換、排泄介助などの重労働
体の向きを変えたり、おむつを変えたりするのは、看護師2人で協力して行います。
患者さんによっては体格が大きく、女性の力では大変な場合も。
排泄物でシーツや洋服が汚れやすく、万が一汚れた場合はすぐに交換しないといけません。
できる限り健康を損ねないように気をつけて対応はしますが、腰を痛めやすい状況があるのも否定できないでしょう。
新しい知識と技術を身につける必要性
医療は日々進歩しており「昔は問題なかったことが、今はやってはいけない」といわれることはよくあります。
点滴の管理方法や、薬剤の取り扱いはもちろん、病気の治療方針が変わることもしばしば。
看護師として、様々なことにアンテナをはって日々勉強しなくてはいけません。
看護師資格を取ったら終了ではなく、資格を取得した日から勉強し続ける姿勢が求められます。
医師のパワハラなどの人間関係
看護師は、医師から指示を受けて働く必要があります。
この薬剤でいいのか、患者さんの治療方針はこのままでいいのか、たくさんの疑問がわくこともあるでしょう。
医師と円滑にコミュニケーションが取れるといいのですが、一部にはパワハラが横行しており、一緒に仕事を続けるのが難しい医師もいます。
患者さんのために、医師の機嫌を見ながら話しかける、ということもしばしばあります。
医師だけでなく、患者さんや看護師との人間関係に疲れて退職というケースも珍しくありません。
看護師の給料が安いまま上がらない理由
看護師の給料はなぜ安いと思われることが多いのでしょうか?
実際にはもっともらえるはず、と感じている看護師に、業界全体の置かれている状況をお伝えします。
看護業界自体の昇給率が低い
看護師の給料は、20代は高めですが、30代以降は他の産業と比較して昇給率が低くなります。
薬剤師や検査技師などの医療職者と比較して、50歳前後での給料は最下位です。
看護師は昇給が少ないため、医療以外の労働者と比較しても、給料が大幅に低いという結果がでています。
看護の仕事に魅力を感じている人でも、年齢とともに給料が上がらなければ、仕事としては続けにくいでしょう。
参考:日本看護協会.”看護職員の収入増の必要性に関する意見書”.日本看護協会ホームページ.2021-11-25. (参照2024-10-16)
役職者が少ない
一般企業と同じように、看護部長や看護師長などの役職になると手当がつき、給料が上がります。
しかし看護の現場では、部長などの役職者の数が一般企業に比べて少なく、そもそも役職につける人数が限られるため、昇給しにくいのです。
さらに、看護師の役職は勤務状況が過酷なので、なりたいという人は少ないのが現状でしょう。
病院の経営状態が良くない
病院の経営は、年々厳しくなっています。
原因としては、診療報酬の連続マイナス改定や、7対1看護制度の導入による人件費の増加、医療の質を保つために様々な職種の医療従事者が増えていること、などがあげられます。
勤務している病院の経営状態を知らずに就職すると、ボーナスが支給されなかった、実は病院が閉鎖される話が進んでいる状態だったというケースもあるでしょう。
参考:中西康裕 今村知明(2019).『医療現場のお金の話』.メディカ出版.
スキルアップをしても給料に反映されない
専門看護師、認定看護師、糖尿病や心電図の検定など、看護師のスキルアップには様々な資格があります。
しかし、ほとんどの資格が給料に反映されません。
取得に大変な労力のいる専門看護師ですら、資格を取る前後で年収が変わっていないと答えた看護師が80%にも上ります。
勉強して経験を積んでも給料アップがないのは、看護師のモチベーション低下に深く関わっているでしょう。
参考:日本看護協会.”看護職の給与の調査・データ”.日本看護協会ホームページ.(参照2024-10-16)
看護師を辞めたいとき次の仕事を探す前に
看護師を辞めたくなったら、次の病院を探す前に立ち止まって考える必要があります。
なぜこの仕事を選んだのか、自分はこの仕事を続けていくのか、他の選択肢はないのか考えてみましょう。
自分の適性を知る
職業を選ぶときは、自分の長所が活かせる仕事か見極めることがとても大切です。
看護師の仕事は優先度を考え、医師の指示を確認し、検査の準備も進めていく、といったマルチタスクが求められます。
業務を同時にこなすことが好きな人もいれば、苦手な人も多くいるでしょう。
自分が苦手だと思う部分を、直そうとするのは大変な労力が必要です。
自分の長所に磨きをかけていく方が仕事はうまくいきやすく、やりがいを感じられる可能性が高いです。
看護師が活躍できる場所はたくさんあります。
自分の傾向を知るツールはネット上にもいくつかあるので、気軽に試してみましょう。
人生における優先度を把握する
人生には、時間が経つにつれてできなくなりがちな、優先すべき事柄が存在します。
何歳でもチャレンジはできるけれど、年齢とともに体力・気力的に難しくなることもたくさんあります。
ワーキングホリデーや資格の取得、妊娠など、人によって優先事項は違うでしょう。
一番大切なのは、時間の使い方を間違えないことです。
自分のやりたいことの優先度を考え、今の職場で実現ができないなら、仕事を見直す必要があるでしょう。
働き方は多様であると知る
看護師を目指す人は、学校を卒業すると、大半が病院に就職します。
その後は、クリニック看護師や訪問看護師として働く場合もあれば、ツアーナース、コールセンター、医療系のライターなど看護師の知識を活かして働く場合などもあり、多様な働き方が可能です。
看護師求人は、病院以外にも存在することを知っておきましょう。
一つの職場にこだわらない
人は、自分にゆっくりと迫ってくる危機に関して、鈍感な面があります。
しんどくてもまだ頑張れる、周囲も頑張っているのに自分はできないのは申し訳ない、と真面目な人ほど考えてしまいます。
特に、新人看護師で初めて配属された職場は、そこでうまくいかないと、看護師として今後もやっていけないのではないか、と思い詰めてしまう人もいるでしょう。
職場は無数にあります。
自分が働ける場所は、一つではないということを知っておきましょう。
看護師を辞めたいときは自分の居場所を変えてみる
今の職場を辞めたい、自分の強みを活かして働けないと感じたら、すぐにできることから順番に見ていきましょう。
配属先のチームを変える
患者さんの病状によって、看護師がチームごとに分けられている場合があるでしょう。
チーム変更が可能な場合、深く思い悩む前に申し入れてみると良いかもしれません。
配属先が違うだけで業務内容もガラリと変わるため、自分の置かれている状況をすぐに変えやすいでしょう。
興味のあるチームに移って新たな分野を勉強することで、視野が広がる可能性もあります。
部署異動を希望する
病棟が変わると患者さんの病気の内容や、医師や看護師との人間関係も変わります。
同じ病院であれば給料は変わりませんが、働き方や人間関係の変化が起こり、ストレスが減る可能性があります。
病棟看護師と外来看護師では、業務の流れや患者さんとの関わり方などが大きく違って感じられるでしょう。
転職先の病院を探す
夜勤手当や基本給は病院によって異なりますが、年間の有給取得率や休みの数、休憩時間も違います。
転職先を探すときは、給料の金額だけでなく、実際に働く時間も考えて探す必要があるでしょう。
看護師転職で病院を探す場合は、看護師転職サイトに登録したり、実際に働いている看護師から情報を集めたりするのがおすすめです。
病院以外の働き方を考える
病院で看護師として働くことに行き詰まったら、転職先を病院に決めず、看護の仕事にこだわらず、他の働き方も視野に入れましょう。
ほとんどの看護師は、中学生や高校生で看護師になると決めて看護学校に入ります。
10代で職業を決めてしまうのは、人によっては早すぎる決断だったのかもしれません。
実際に働いてみて違うと感じたら、看護職員にこだわらないことも大切です。
看護師の給料が安い…辞めたいと思ったら立ち止まって環境を見直そう!
看護師が給料に不満を感じるときは、職場のストレスに悩まされているケースが多いです。
自分の適性に合わない職場で、無理に順応しようと頑張っているせいかもしれません。
環境を変える前に、まずは自分を知る必要があります。
その上で、落ち着いて自分の働きやすい職場がどんなものなのか考えてみましょう。
結果として、給料面ではなく、職場の環境に不満があったと気づく場合もあるでしょう。
配属先の小さな変更から、病院の転職、看護師以外の職探しまで、選択肢は多岐にわたります。
看護師転職サイトは、転職活動を強要するものでも、登録したら必ず求人に応募しないといけないものでもありません。
病院の情報を集めるために有利なので、相談してみると良いでしょう。