老健に向いてる看護師とは?メリット・デメリットや仕事内容&やりがいを解説

「老健に向いている看護師ってどんな人?」

「老健で働く看護師って何をしているの?」

このような疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、老健で働く看護師の仕事内容や向いている人の特徴をわかりやすく解説します。

そもそも介護老人保健施設(老健)ってどんな場所?

老健は「働きやすい」「負担が少ない」などのイメージを持つ人が多い職場。

しかし老健がどのような場所か、しっかりと理解している人は少ないのではないでしょうか。

まずは、介護老人保健施設の概要とよく間違われる「特別養護老人ホーム」との違いを説明します。

老健とは

老健は、リハビリを通じて自宅への復帰を目指す高齢者が利用する介護施設です。

病院と自宅の中間的な役割を担う、「橋渡し」のような立ち位置と考えるとイメージしやすいでしょう。

入所型の施設ですが、あくまで在宅復帰を前提とした短期利用が基本です。

そのため、3〜6ヶ月ごとに退所審査を行い、継続利用の可否が判断されます。

老健の利用者の特徴・入居条件

利用者の多くは、病院での治療が一通り終了した後、自宅復帰に向けたリハビリを行っている高齢者です。

入居の絶対的な条件は「要介護1〜5の認定を受けた要介護者」です。

ただし、施設によって「感染症の有無」や「基礎疾患の内容」など、細かい条件が追加で設定されている場合があり、それによって入所を断られるケースもあります。

また、医療費は基本的に施設の負担となるため、「高度な医療処置を必要とする方」や「処方薬が高額になる方」も入所を断られやすいです。

特別養護老人ホーム(特養)との違い

老健と特養の違いを以下の表で説明します。

項目介護老人保健施設特別養護老人ホーム
目的リハビリや医療処置を受けながら在宅復帰を目指す介護が必要な高齢者の生活の場(終の棲家)
入所条件要介護1〜5原則として要介護3以上
入所期間原則3〜6ヶ月の短期利用(定期的な退所審査あり)長期利用が前提(終生入所も可能)
提供サービスリハビリ、医療ケア、日常生活支援日常生活支援、レクリエーション機能訓練
医療体制医師が常駐(夜間は不在の場合あり)医師は非常勤が多い
費用高い老健より安い

介護老人保健施設(老健)に向いてる人の特徴

老健は、数ヶ月にわたる長期的な看護展開や他職種との連携が多いのが特徴です。

これにやりがいを感じる人もいますが、「大変」と感じる看護師がいるのも事実。

ここでは、老健に向いている看護師の特徴をご紹介します。

老年看護の知識や技術を高めたい人

老健では、慢性疾患管理や認知症ケアなど、いわゆる「老年期疾患とそのケア」を日常的に行います。

介護士との役割分担がはっきりしているため、看護師の介護業務は病院より少ないです。

その分、褥瘡の予防や処置・排泄ケアなど医療処置にしっかりと関われます

また、終末期ケアや緩和ケアに触れる場面もあるので、身体的なケアだけでなく精神的ケアも学べるのもポイント。

こうした環境で働く中で、老年看護に関する知識や技術を、実践的に身につけることができます。

入居者とじっくり関わりたい人

老健は「治療の場」というよりは、「在宅復帰が前提の生活の場」という側面があります。

患者の入れ替わりが激しい病院とは異なり、数ヶ月にわたって同じ入居者と関わるのが特徴。

短期的な処置中心の看護ではなく、長期的な目線で看護を展開するスキルが磨かれます

そのため、「入居者とじっくり関わり、長期的な視点で看護を展開したい人」に向いていると言えるでしょう。

また、医療的なケアだけでなく、日々の会話やふれあいを通じた精神的ケアも重視されるため、「入居者と丁寧に関わりたい人」にもピッタリです。

医療ケア技術・医療管理技術を習得したい人

老健でも、服薬管理・経管栄養・吸引・褥瘡処置など、日常的にさまざまな医療ケアを行います。

処置の件数は病院ほど多くありませんが、毎日繰り返しているうちに「医療ケア技術・医療管理技術」が身についていきます。

ただし、夜間は医師が不在になる場合があり、急変時などには看護師自身のアセスメント力や判断力が問われる場面も。

「現場で実践を重ねながら、実践的な技術を習得したい」という人には、学びの多い環境といえるでしょう。

他職種と連携しながらケアを組み立てたい人

老健では、看護職員同士だけでなく、介護職員やリハビリスタッフ・相談員など、他職種との連携が日常的に求められます。

看護師は業務上、介護士に指示を出す場面が多くなりますが、職種間に上下関係はありません。

あくまで「チームの一員」として関わり、チームで協力しながらケアを行うことが大切です。

そのため、「看護業務だけに集中したい人」よりも、「多職種と意見を交わしながら入居者1人ひとりに合ったケアを組み立てたい」という人に向いています。

ルーチン業務が苦にならない人

老健は、「毎日同じような流れでも苦にならない人」、「安定した働き方を望む人」におすすめの職場です。

老健では日々のスケジュールがある程度決められており、急変対応も少ない傾向にあります。

突発的な対応が少ない分落ち着いた環境で働けるのがメリットです。

ただし、その分ルーチン業務の割合が多くなるため、単調な仕事に飽きやすい人は辛く感じるかもしれません。

介護老人保健施設(老健)で働く看護師の仕事内容

老健で働く看護師の仕事内容は、病院やクリニックと共通する部分もありますが、異なる点も多いです。

ここでは、老健で働く看護師の具体的な仕事内容を紹介します。

入居者の健康・体調管理

老健で働く看護師は、日々のバイタルチェックや全身状態の観察に加え、食事量・運動量・排泄状況など、入居者の生活全般を把握する役割を担います。

わずかな変化にも気づけるよう、表情や話し方・動き方の違いなども注意深く観察しましょう

気になる点があれば、速やかに医師に報告して必要な指示を受けます。

なお、老健では医師が常駐していない時間帯もあるため、看護師の細やかな観察と的確なアセスメントが非常に大切です。

医療処置

医療処置の件数は病院より少ないですが、老健でも褥瘡や創傷の処置、胃ろう・経管栄養の管理、吸引・酸素療法など、基本的な処置を行います。

そのほか、点滴や内服薬の管理ルート確保採血急変対応などにも看護師が対応しなければなりません

また、病棟ごとに診療科が分けられている病院と異なり、老健は複数の診療科が混在しています。

そのため、幅広い疾患に対応できるだけの幅広い知識や、対応力が求められる職場といえるでしょう。

緊急対応

老健では比較的落ち着いた環境とはいえ、発熱・血圧異常・呼吸苦など、急な体調変化への対応は日常的に発生します。

特に、回復期に入り「動けるようになって自信がついてきた頃」は、転倒や骨折といった事故が起こりやすいので注意が必要です。

また、心停止や呼吸停止などの急変時には看護師が初期対応を行い、必要に応じて医師に連絡。

夜間や休日など医師が不在の時間帯には、救急搬送が必要かどうかを看護師自身が判断することもあります。

介護スタッフとの連携

老健では、看護師と介護スタッフが密に連携を取りながらケアを行っています。

バイタルや体調の変化を随時共有し、必要に応じて排泄や食事介助の工夫、飲水の促し、入浴のタイミングなどを看護師が伝えることも。

反対に、介護スタッフから「最近ふらつきがある」「食事に時間がかかる」といった、生活面の気づきを伝えられる場面も少なくありません。

このように、お互いの専門性を活かしながら気づきを共有していくことが質の高いケアにつながるのです。

看護師が介護老人保健施設(老健)で働くメリット

老健看護師は、急変の少なさや汎用的なスキル習得が可能などのメリットがあります。

ここでは、看護師が老健で働くメリットについて詳しく解説します。

病院より落ち着いた環境で働ける

老健で働くメリットの1つは、「病院より落ち着いた環境で働ける」ことです。

老健は、急性期病院のように緊急対応が頻繁に発生する環境ではありません。

もちろん急変対応はゼロではありませんが、件数自体が少ないため、比較的落ち着いて働ける職場と言えます。

それに加えて、高度な医療処置を必要とする入居者がほとんどいないため、バタバタと忙しさに追われることも少ないです。

1人ひとりの入居者とじっくり関わる時間を取りやすく丁寧な看護を提供したい人にとっては大きなメリットといえるでしょう。

介護業務による身体的な負担が少ない

「介護業務による身体的な負担が病院よりも少ない」のも、看護師が老健で働くメリットです。

老健は看護師と介護士の役割分担がハッキリしていることが多く、排泄や入浴などの介助は、介護のプロである介護士が担当します。

もちろん、看護師が介護業務に関わる場面もありますが、全体としては医療ケアなどの看護業務に専念しやすいです。

病棟看護でも活かせるスキルが身につく

老健でも、点滴や経管栄養、吸引、褥瘡処置など、病院で必要とされる医療処置は一通り経験できます。

また、医師がいない時間帯には、看護師が緊急時の判断や初期対応を求められるため咄嗟の判断力や観察力アセスメント能力が鍛えられます

また、老健では介護士・ケアマネジャー・訪問看護師など、さまざまな職種と連携する機会が多いのも特徴。

病棟勤務でも重要な「他職種連携」「チーム医療」の基礎が鍛えられます。

看護師が介護老人保健施設(老健)で働くデメリット

老健への転職を検討する際は、メリットだけでなくデメリットも把握しておくことが大切です。

ここでは、老健看護師として働くうえで注意しておきたいポイントをご紹介します。

緊急時対応の負担が大きい

急変時の対応は、老健でも病院と同じく看護師が中心となります。

ただし、老健では看護師の人数が少ないことが多く、1人あたりの負担が大きくなりがちです。

特に、夜間や休日など医師が不在となる時間帯では看護師自身の判断で対応を迫られることも

緊張感のある現場で重要な判断を任されるため、慣れないうちは強いプレッシャーを感じるでしょう。

夜間・休日の負担が大きい

夜間や休日は、看護師1人+介護士2〜3人という少人数体制で回す施設もあり、看護師にかかる負担が大きくなりやすいです。

夜間や休日に発生する転倒・発熱などの対応では、救急搬送すべきか、医師が出勤するまで様子を見るべきか判断に悩むケースもあります。

また、休憩時間中に介護士からの相談や報告が相次ぐと、十分に休息が取れず心身ともに疲労を感じることも。

このような場面は、「老健で働く看護師ならではの悩み」と言えるでしょう。

キャリアアップの機会が限られる

老健には、病院のような「看護主任→看護師長→看護部長」のような明確なキャリアパスがない場合が多いです。

看護管理者や施設長補佐を目指すことは可能ですが、ポスト自体が少なく実際には昇進のチャンスはほとんどありません

また、専門看護師や認定看護師など、資格取得の支援制度も整っていない場合が多く、キャリアアップを目指す人には不向きです。

老健は安定した働き方を求める看護師にピッタリ!病院とは異なる環境でスキルを磨こう

老健は、在宅復帰を目指す高齢者を支える施設で、病院とは異なるやりがいやスキルを得られる職場です。

落ち着いた環境で入居者とじっくり向き合いつつ、「医療ケア技術」や「チーム医療の基礎」を身につけられます。

安定した働き方を求めながら実践的なスキルを身につけたい看護師にとって老健はベストな選択といえるでしょう。

ただし、施設によっては「夜間の少人数体制」「キャリアアップの難しさ」など、デメリットがあるかもしれません。

転職を検討する際は、事前にマイナスもよく確認しておくことをおすすめします。

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