「看護師の給料は本当に高すぎる?」
「他の職種と比べると、どのくらいの違いがあるの?」
このような疑問を抱える方も多いのではないでしょうか
この記事では、看護師の平均年収や他職種との比較、高収入といわれる理由の実態について詳しく解説します。
看護師として収入アップを目指す方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
看護師の給料事情を紹介
看護師の給料は「高すぎる」と言われがちですが、本当にそうでしょうか?
現場で働いている看護師は、給料が仕事に見合っていないと感じることも多いです。
そこで、まずは看護師の平均給料額と、他の医療職や全職種の平均給料額との違いを見ていきましょう。
看護師の平均月給・賞与額
きまって支給する現金給与額(月給) | 34万800円 |
年間賞与その他特別給与額 | 79万9,400円 |
参考:「厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査」
厚生労働省の調査によると、看護師の平均月給は34万800円、賞与額は79万9,400円となっています。
この金額は夜勤手当や残業代などを含めた総支給額で、調査対象の平均は「40.5歳、勤続年数8.5年、超過実労働時間6時間」でした。
ただし、ここから税金や社会保険料が差し引かれるため、実際の手取り額はもう少し減ります。
他の医療職との比較
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、医療職の給与は以下のようになっています。
職種 | きまって支給する現金給与額(月給) | 年間賞与その他特別給与額 |
看護師 | 34万800円 | 79万9,400円 |
准看護師 | 28万3,500円 | 61万6,800円 |
保健師 | 30万9,100円 | 72万7,000円 |
助産師 | 38万9,900円 | 87万7,800円 |
医師 | 97万3,200円 | 63万3,200円 |
薬剤師 | 40万1,700円 | 67万4,700円 |
放射線技師 | 34万100円 | 87万2,200円 |
臨床検査技師 | 33万3,800円 | 74万9,100円 |
理学療法士 | 29万円 | 67万3,700円 |
ケアマネージャー | 28万4,300円 | 59万3,800円 |
参考:「厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査」
看護師より給料が高いのは、「医師、薬剤師、助産師」の3職種のみという結果でした。
「保健師」の給与が看護師より低くなっていますが、保健師は夜勤の少ない職場が多く、夜勤手当がつかないことも影響していると考えられます。
この結果から、看護師は医療職の中でも給与水準が高く、安定した収入を得やすい職業であると言えるでしょう。
全職種との比較
国税庁の調査によると、看護師の平均給与は488万9,000円で、全職種の平均給与(460万円)よりも「約29万円高い」という結果となっています。
職種 | 平均給与額 |
全職種 | 460万円 |
看護師 | 488万9,000円 |
参考:「国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査」
このデータには、アルバイトやパート勤務者の給与も含まれているため、正社員だけの平均よりも低く算出されていると考えられます。
それでも、看護師の平均給与額は全国平均を大きく上回っており、経済的にゆとりを持ちやすい職業のひとつと言えるでしょう。
看護師の給料が高すぎると言われる理由
看護師の給与は、他の医療職や全国平均と比べて高いことが分かりました。
では、なぜ看護師の給料は他の仕事より高いのでしょうか?
その背景や理由について、詳しく解説します。
手当によって給与が底上げされている
看護師の給与が高くなりやすい理由の1つとして、豊富な「手当」の存在があります。
看護師は、夜勤手当や残業手当、休日手当、危険手当など、多くの手当が支給されるのが特徴です。
中でも「夜勤手当」は1回ごとの支給額が大きく、夜勤の回数が増えれば、その分収入も増えます。
また、病院勤務の看護職は業務量が多く、残業が発生しやすいため、「残業手当」の金額も大きくなりがち。
このように、基本給に加えて多くの手当が支給されるため、看護師の給与は高くなりやすいのです。
給料の男女差が小さい
国税庁および厚生労働省の調査によると、全職種の平均給与は男性が569万円、女性が316万円で、253万円の差があります。
一方、看護師の平均給与は男性が508万円、女性が487万円で、その差はわずか21万円にとどまっています。
職種 | 平均給与額(男性) | 平均給与額(女性) | 男女差 |
全職種 | 569万円 | 316万円 | 253万円 |
看護師 | 508万円 | 487万円 | 21万円 |
参考:「国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査」、「厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査」
給料の男女差が小さい背景には、「看護師は女性の割合が圧倒的に多い」ことや、「給与体系や昇進に男女差がない」ことが挙げられます。
男性看護師の給与が平均より低い影響もありますが、それ以上に女性看護師の給与水準が高いため、全国平均と比べて男女差が小さくなっているのです。
看護師が年収アップを目指すためのポイント
看護師の給与は全国平均より高いものの、実際に現場で働いていると、「仕事量や責任の重さに見合っていない」と感じることもありますよね。
そこで、看護師が収入を増やす4つの方法について、詳しく解説します。
上位資格や管理職を目指す
リスクゼロで収入を増やしたい場合は、昇進や上位資格の取得を目指すのがおすすめ。
日本看護協会の調査によると、非管理職の看護師の平均月収は約39.5万円で、「30〜40万円未満」の割合がもっとも多いです。
そこから、中間管理職になると約44.3万円、管理職になると約51.1万円と、役職が上がるほど給与も増加。
特に、管理職では「50〜60万円未満」の割合がもっとも多く、非管理職と比べて給与水準が大きく向上しているのが分かります。
また、管理職ほどの大きな昇給はないものの、「専門看護師」や「認定看護師」などの上位資格を取得すると、平均1万円程度の給与アップが期待できるでしょう。
30万円未満 | 30〜40万円未満 | 40〜50万円未満 | 50〜60万円未満 | 60万円以上 | 平均(円) | |
非管理職 | 7.6% | 44.3% | 39.8% | 7.3% | 1.0% | 394,761 |
中間管理職(主任・副看護師長・看護師長) | 1.5% | 25.3% | 49.2% | 21.5% | 2.6% | 442,762 |
管理職(副看護部長・看護部長・副院長) | 0.4% | 9.0% | 36.7% | 37.5% | 16.5% | 511,301 |
専門看護師・認定看護師(非管理職) | 5.3% | 38.1% | 45.9% | 9.6% | 1.1% | 405,972 |
参考:「日本看護協会 2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」
夜勤の回数を増やす
日本看護協会の調査によると、夜勤1回あたりの手当額は以下のようになっています。
夜勤形態 | 夜勤手当額(1回あたり) |
3交代準夜勤 | 4,223円 |
3交代深夜勤 | 5,119円 |
2交代 | 11,368円 |
夜勤手当は、「3交代で4,223円〜5,119円」「2交代で11,368円」と、看護師に支給される各種手当の中でも金額が大きいのが特徴。
そのため、夜勤に入る回数を増やせば増やすほど、収入も大きく増えやすいです。
また、日勤なしの「夜勤専従」という働き方をすれば、看護師の平均収入を大きく上回る収入が得られます。
ただし、夜勤を増やし過ぎると、生活リズムの乱れや体調不良を招く可能性があるため、無理のない範囲で調整するよう心がけましょう。
副業に取り組む
休日やスキマ時間を活用して副業に取り組むと、効率的に収入を増やせます。
副業にはさまざまな種類がありますが、看護スキルを活かせる副業には以下のようなものがあります。
- ツアーナース(旅行や合宿に同行し、健康管理やケガの応急処置を担当。)
- イベントナース(大会やライブなどで、熱中症やケガの応急処置を担当。)
- 訪問看護(空いた時間で患者さんの自宅まで訪問し、看護ケアを提供。)
- 夜勤バイト(人手不足の病院やクリニックで、夜勤のスポット勤務。)
- ワクチン接種(自治体や企業の集団接種会場で、ワクチン接種を担当。)
転職を検討する
現在の病院の給与に不満がある場合、転職で収入アップを目指すのも1つの手です。
病院によって給与水準は異なり、特に「大規模病院」や「公的病院」は基本給や賞与が高い傾向があります。
また、住宅手当や扶養手当、退職金制度などの福利厚生が充実している職場を選ぶことで、実質的な給料アップにつながることも。
転職による収入アップを目指す場合は、基本給や賞与だけでなく、福利厚生や手当の有無も含めて検討しましょう。
看護師が高収入を目指せる職場・働き方
残業や夜勤の手当で稼ぐのは、自分の時間を犠牲にしているような感覚を覚える方もいるでしょう。
ここでは、「生活リズムを安定させながら高収入を目指せる職場」を4つご紹介します。
製薬会社
医療知識を活かしつつ高収入を目指せる働き方として、製薬会社で MR(Medical Representative) として働く方法があります。
※MR:医薬品の適正使用を促進するために、医師や薬剤師などの医療従事者に対して医薬品情報の提供・収集を行う営業職。
MRは、基本給が高めに設定されている場合が多く、業績に応じてインセンティブが支給されることもあります。
また、土日休みの企業も多いため、生活リズムを整えやすい点も魅力です。
治験支援施設機関
安定した働き方を目指すなら、治験支援施設機関(SMO)で治験コーディネーター(CRC)として働くのもおすすめ。
CRCの主な業務は、治験に参加する被験者への説明やスケジュール調整、データの管理など。
医療機関と製薬会社・医療機器メーカーの間に立ち、治験がスムーズに進むようサポートします。
基本給が高めに設定されているほか、夜勤や土日勤務がないため、規則正しい生活を送りながら収入アップを目指せます。
美容クリニック
高収入を目指したいなら、美容クリニックで働くのもおすすめです。
美容クリニックは自費診療が中心のため、一般的な病院よりも収益を上げやすく、給与水準が高めに設定されている場合が多いです。
一般的な看護業務に加え、クリニックの営業職的な役割も任されるので、カウンセリングや施術の提案を行う場面もあります。
また、業績に応じたインセンティブが支給されるため、成果次第で大幅な収入アップが可能なのも魅力。
基本的な看護スキルがあれば転職でき、夜勤や土日勤務がないため、ワークライフバランスを重視した働き方がしやすいでしょう。
訪問看護ステーション
自分の頑張りが収入に直結する働き方を希望するなら、訪問看護ステーションがおすすめ。
「訪問件数に応じたインセンティブ」を導入している事業所が多く、成果次第では年収1,000万円を超えるケースもあります。
高収入が得られる他、夜勤がないため生活リズムが整いやすく、経験を積めば管理職へのキャリアアップが可能な点も魅力です。
ただし、運転免許が必須条件となることが多いため、事前に確認しておきましょう。
「高すぎる」は誤解!看護師の給料は責任や専門性に見合った正当な評価です
看護師の給与は全国平均より高めですが、その背景には「夜勤や残業の負担」「専門的なスキル」「患者の命を預かる責任の重さ」があります。
また、夜勤手当や残業手当が収入の一部を占めるため、実際には 負担に見合っていないと感じる看護師も少なくありません。
看護師が高収入を目指すには、管理職や専門資格の取得、副業、転職などの選択肢をうまく活用するのがおすすめ。
夜勤や残業に頼らず高収入を目指せる職場もあるので、自分に合った働き方を見つけつつ、無理なく収入アップを目指しましょう。